ドライゼMG13機関銃

ドライゼMG13機関銃（MG Modell Dreyse 13, Maschinengewehr 13, MG13）は、ドイツで1920年代から1930年代にかけて設計・製造された空冷式機関銃です。軽機関銃に分類されますが、オプション装備による拡張性があり、汎用機関銃に近い特徴も持ち合わせていました。MG34の先駆的存在と言えるでしょう。

概要

第一次世界大戦後、敗戦国ドイツは自動火器の開発を制限され、保有していた水冷式重機関銃（MG08）も各国に接収されました。ヴァイマル共和国軍（ライヒスヴェーア）では機関銃が不足していました。また、諸外国で開発された新型軽機関銃群（シャテルロー M1924/29、マドセン M1903/24、十一年式、DP、ZB26、BARなど）に対し、旧式のMG08やMG08/15の性能に不満を抱いていました。しかし、共和国軍は外国製軽機関銃の採用には反対でした。

そこで、共和国軍兵器局（HWaA）は、大戦の戦訓と諸外国の動向から、新型機関銃を歩兵が携行可能な空冷式軽機関銃とする開発方針を1926年に決定しました。新型軽機関銃の開発と同時に、水冷でテープ給弾式の新型重機関銃も開発し、軽機関銃と重機関銃をセットで運用することを想定していました。そして、生産や整備、訓練の面から、両者の基本設計が同じであることが望ましいと考えられていました。

1927年、ハインリヒ・フォルマー（Heinrich Vollmer）は、HWaAに試作軽機関銃を提供しましたが、軽機関銃のみを提案したため、HWaAは不採用を決定しました。

ニードルガンで有名なドライゼ（Dreyse）社は、1907年にラインメタル社によって買収されました。その後、「ドライゼ水冷式重機関銃」が、元ドライゼ社の技術者であったルイス・シュマイザー（ヒューゴ・シュマイザーとハンス・シュマイザーの父）によって開発されました。ラインメタル社は、買収後も自社製品の一部に「ドライゼ」のブランド名を使い続けました。

戦後、ドイツ国内では、ラインメタル社（とルイス・シュタンゲ）によって、第一次大戦型のドライゼM1912あるいはM1915あるいはM1918水冷式重機関銃を改造して空冷化することで、新型機関銃が開発され、1928年-1929年にかけて射撃試験が行われました。「Gerät 13 a」は1930年に共和国軍に採用されると、「MG13」という名称を与えられました。「13」は1913年を意味し、この新型機関銃が大戦中に開発されていたかのように装い、連合国管理委員会の目を欺く事を目的とした名称でした。

製造は、ヴェルサイユ条約下のドイツで唯一歩兵用銃器の製造が許されていたズール（Suhl）のジムソン社（Simson&Co.）で行われた、とされています。ただしこれは当時の状況からの推測であって確認されておらず、実際の製造場所は不明です。一説にはラインメタル社が製造に関わっていたとされています。

MG13は、1930年からドイツ軍の標準軽機関銃として採用・導入され、1932年に制式化されました。1930年代前半、ドイツ軍は、MG08、MG08/15、MG08/18、MG13の、4種類の機関銃で武装していました。これらの旧式機関銃は、MG34やMG42が開発されると、1934年から退役しました。

退役したMG13は1938年頃に、ほとんどがポルトガルとスペインに売却され、少数がスペイン内戦で使用されました。ポルトガルに売却されたMG13には、ドイツ軍で使用していた既存の物だけでなく、ポルトガル向けに生産したポルトガル仕様の物も存在します。ポルトガルではドライゼ M938機関銃（Metralhadora 7,92 mm m/1938 Dreyse）の名称で1960年頃まで使われました。

売却されなかったMG13は、少数がいくつかの第二線級部隊や警察で使用された他、第二次世界大戦末期にドイツの兵器不足が深刻になると、保管庫から引っ張り出されて、再配備されました。

また、MG13の短銃身型であるMG13kが、Kfz.13やSd.Kfz.221などの車載機関銃や、I号戦車の主砲・NbFzの機銃や、初期のJu87の後部座席の旋回機銃などとしても使われています。

中国国民党軍は1936年に、I号戦車とともにMG13も購入しており、対日戦に用いています。

第二次世界大戦後に、ノルウェーはドイツからMG13を引き渡され、MG13kに改造して、ノルウェー警察で使用しました。

設計

MG13は、パイプ状の折り畳み式ストック、キャリングハンドル、二脚架が付属しています。ストックのパイプ部分に、床板付きの単脚の後脚を取り付けることができ、安定した射撃姿勢をとることができます。給弾は25発入りバナナ型マガジンを銃本体左側面の給弾口に水平に挿し込みます。実用射程は1,000～1,400 ｍです。

75発入りダブルドラムマガジンも使用可能で、レシーバーの左側と下側にドラムマガジン2個が斜めに並んだ状態で付きます。三脚架に載せ、対空機関銃として使われました。対空機関銃型をMG13kdと呼称します。対空防御時の効果的射程は800～1,000 ｍでした。

ベルト給弾方式には対応していないため、継続射撃能力はそれより劣ります。初期に開発された機関銃であるMG13とMG30がマガジン給弾方式のみなのは、ドイツがヴェルサイユ条約でベルト給弾方式機関銃の開発を禁じられていたためです。

銃身は交換可能であり、MG34やMG42程ではないが、それでも銃器としてはかなり簡便な類です。MG34やMG42のような継続射撃能力はないので、銃身が赤熱化するような、戦場で頻繁に交換する必要が、そもそもなかったと思われます。

後のMG34と共通規格の箇所や部品が多く、MG34と共通の対空マウントが使用できる他、MG34と共通のスパイダー・サイトをバレルジャケットの上部の中ほどに取り付けることができます。

登場作品

War Thunder
トータル・タンク・シミュレーター
Enlisted

外部リンク

MG13用のドッペル・トロンメル
ZFゲレート38 機関銃の延長型バナナ型マガジン
YouTube動画「MG13 DRUM」. MG13用のドッペル・トロンメルの独特の形状が分かる。
YouTube動画「Live fire of original MG-13 with an original MG-13 Drum」
YouTube動画「Original MG-13 firing blanks through an original blank adapter」. ブランク・アダプターを取り付けて空砲射撃する貴重な動画。
YouTube動画「Portugal's MG-13: the M938 Light Machine Gun」. ポルトガルのM938の詳細な動画。11分37～46秒の、銃身を引き抜く作業が見所。

ドライゼMG13機関銃