ドレスデン美術館

ドレスデン国立美術館は、ドイツ・ザクセン州の州立美術館群で、その歴史は16世紀のザクセン選帝侯の時代に遡ります。特に18世紀、アウグスト強健王の時代にコレクションが強化され、今日に至るまでヨーロッパ屈指の美術館としてその名を馳せています。

この美術館群は、ドレスデン市内に点在する12の博物館から構成され、中でも有名なのがツヴィンガー宮殿です。この宮殿は、アウグスト強健王が1711年から1728年にかけて建設したドイツ後期バロック建築の傑作で、第二次世界大戦で大きな被害を受けましたが、その後見事に復元されました。ツヴィンガー宮殿には、中国や日本の陶磁器コレクションが約30,000点も収蔵されており、特に日本の古伊万里は、ヨーロッパにおける「柿右衛門様式」の分類に大きな影響を与えたとされています。また、古典絵画館（アルテ・マイスター絵画館）には、ジョルジョーネの『眠れるヴィーナス』やラファエッロの『システィーナの聖母』といったルネサンスやバロックの巨匠たちの名画が展示されており、フェルメールの作品も2点所蔵されています。

一方、近代絵画館（ノイエ・マイスター）は、ツヴィンガー宮殿の東に位置するアルベルティヌムにあります。こちらでは、19世紀から20世紀のドイツ絵画やフランス印象派の作品を楽しむことができます。アルベルティヌム自体も、元々は16世紀に武器庫として建てられた歴史的建造物です。かつてアルベルティヌムにあったザクセン王家の宝飾品コレクション「緑の丸天井」は、現在はレジデンツ城に移転しています。

ドレスデン国立美術館のコレクションは、ドイツ観念論哲学の巨匠であるヘーゲル、シェリング、フィヒテ、そしてゲーテらにも影響を与えたことでも知られています。彼らは、この美術館のコレクションを基に「美論」を形成したと言われています。特にヴェネツィア派の絵画が多い点が、彼らの美学に独特の偏りを与えたと指摘されています。

日本においても、ドレスデン国立美術館のコレクションは度々紹介されています。1974年には国立西洋美術館と京都国立博物館で『ドイツ民主共和国ドレスデン国立美術館所蔵　ヨーロッパ絵画名作展』が開催されました。また、1975年には福岡大博覧会でドレスデン美術館のパビリオンが設けられ、古伊万里やマイセンなど158点が展示されました。その後、これらの展示は京都、佐賀、東京、名古屋へと巡回しました。さらに、佐賀県有田町には、ツヴィンガー宮殿の王冠門部分が再現された有田ポーセリンパークが建設され、ドレスデン国立美術館との深い関係を示しています。ここでは、1993年、1995年にドレスデン国立美術館所蔵の古伊万里やマイセンの展覧会が開催されています。

2005年には、再び国立西洋美術館と兵庫県立美術館にて『ドレスデン国立美術館展』が開催されるなど、日本とドレスデン国立美術館の間には長年にわたる交流があります。

主な収蔵品としては、古典絵画館ではラファエッロの『システィーナの聖母』、ジョルジョーネの『眠れるヴィーナス』、プッサンの『フローラの王国』、フェルメールの『窓辺で手紙を読む女』などが挙げられます。近代絵画館では、フリードリヒの『山上の十字架』などが有名です。

ドレスデン国立美術館は、その豊かな歴史と美術コレクション、そしてバロック建築が調和した、非常に魅力的な美術館群です。

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