ドロミーティ

ドロミーティ：自然と歴史が織りなす山岳地帯

ドロミーティ（Dolomiti）は、イタリア北東部に広がる山岳地帯で、東アルプス山脈の一部を構成しています。その特異な景観は、ユネスコの世界遺産にも登録されており、世界中から多くの観光客や登山家が訪れます。

名称の由来

ドロミーティという名前は、18世紀フランスの地質学者デオダ・ドゥ・ドロミュー（Déodat de Dolomieu）に由来します。彼がこの地で発見した苦灰石（ドロマイト）が、この山々の名前の由来となりました。また、イタリア語では「モンティ・パッリディ（Monti Pallidi、淡色の山々）」とも呼ばれます。

ドロミーティの地理的範囲

ドロミーティの範囲は、おおむね北はリエンツァ川、西はイザルコ川とアディジェ川、南はブレンタ川、東はピアーヴェ川に囲まれた地域とされています。しかし、地質学的に共通の特徴を持つ山地は、この範囲外にも存在し、ドロミーティ・ディ・ブレンタやドロミーティ・フリウラーネなどがその例です。

歴史

数千年前からこの地には人が住み、狩猟や採集を行っていました。18世紀後半には、フランツ・フォン・ヴルフェンらが山頂に到達した記録が残っています。19世紀には、ジョン・ボールやパウル・グローマンといった登山家たちが、多くの山々の初登頂を達成しました。

第一次世界大戦中には、この地でイタリア軍とオーストリア帝国軍が激戦を繰り広げ、現在でもその名残を見ることができます。チンクェトッリやモンテ・ピアナなどには、野外戦争博物館が開設されています。また、岩壁に作られたヴィア・フェラータ（鉄の道）は、多くのクライマーを魅了しています。

20世紀に入り、カール・フェリックス・ヴォルフとフーゴ・フォン・ロッシが著した『ドロミテのサガ』によって、ドロミーティはファネス王国の叙事詩の舞台としても知られるようになりました。現在では、数多くの長距離遊歩道（アルテ・ヴィエ）が整備されており、多くのハイカーがその自然を満喫しています。

地理

ドロミーティの最高峰は、標高3343mのマルモラーダです。特徴的な形の急峻な岩山が多く、ロッククライミングの場としても人気があります。標高の低い場所には針葉樹林が広がり、高地では放牧が行われています。この地には、オオヤマネコやハイイロイワシャコなど、多様な動植物が生息しており、ヒグマの再導入も試みられています。

また、ドロミーティの地中には、中生代の炭酸塩台地が発達しており、三畳紀の海洋生物の化石が多数発見されています。しかし、他の石灰岩質の地域とは異なり、ドロミーティには石灰岩の侵食による洞窟などはあまり見られません。

主な山、峠、谷、湖

主な山：マルモラーダ、アンテラーオ、チヴェッタ、トレ・チーメ・ディ・ラヴァレードなど
主な峠：多数
主な谷：ヴァッレ・デル・ボイテ、コンカ・アンペッツァーナ、ヴァル・ガルデーナ、ヴァル・バディーアなど
主な湖：多数

世界遺産

ドロミーティは、その自然美と地質学的重要性から、ユネスコの世界遺産に登録されています。登録された地域は、ペルモ＝クローダ・ダ・ラーゴ、マルモラーダ、パレ・ディ・サン・マルティーノなど、9つの地域から構成されています。

世界遺産としての登録基準は、以下の通りです。

(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
(8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。

地域社会

この地域では、ラディン語が使われており、その文化は独特です。経済は、主に観光業によって支えられています。

ドロミーティに因む名称

ドロミテというブランド名の登山靴やスキーブーツ、トライアンフの自動車の名前など、ドロミーティにちなんだ名前が使用されています。また、映画「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者|ジュラシック・ワールド_新たなる支配者」では、ドロミーティ山脈が重要な舞台として登場します。

ドロミーティは、その壮大な景観、豊かな自然、そして歴史が織りなす独特の文化を持つ、魅力的な山岳地帯です。

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