ドン (通貨)

ベトナムの通貨「ドン」：歴史、紙幣、硬貨、そしてその現在

ベトナムの通貨単位はドン(VND)です。ISO 4217コードはVND、通貨記号は₫です。ドンという名称は漢字の「銅」に由来し、かつてベトナムで流通していた銅銭にちなみます。補助単位としてハオとシュウが存在しましたが、現在は使われていません。

ドンの歴史

ベトナムにおける通貨の歴史は古く、銅銭が流通していました。フランスの植民地支配下にあったフランス領インドシナ時代には、フランス語で「ピアストル」と呼ばれた通貨が用いられていました。ベトナム語ではこれをドン、もしくは銀を意味するバクと呼んでいました。ベトナム独立後、南北で別々の通貨が発行されましたが、いずれもドンを単位としていました。1978年の南北統一後、統一ドンが導入されました。その後、1985年にはデノミネーション（通貨切り下げ）が行われています。

北ベトナム

1946年、ベトミン政府はフランス領インドシナ・ピアストルに代わる独自通貨ドンを導入しました。その後、1951年と1958年に2度のデノミネーションが行われました。

南ベトナム

南ベトナムでは、当初フランス領インドシナ・ピアストルとドンを併用していましたが、後に「ベトナム共和国ドン」が使用されました。1975年のサイゴン陥落後、「解放ドン」に移行し、その後統一ドンへと統合されました。

統一ドンとドン切り下げ

南北統一後の1978年、統一ドンが導入されました。しかし、その後インフレが続き、1985年にはデノミネーションが行われました。このインフレは1990年代初頭まで続きました。

ドンの特徴

2019年3月時点では、1ベトナムドンは約0.05円程度と、非常に小額な通貨単位です。そのため、金額表示では3桁ごとに区切り文字「.」を使用することが一般的です。長年のインフレの影響から、1000ドン未満で買えるものはほとんどありません。そのため、1000ドンを「1k₫」と略記することもあります。

紙幣

現在、100ドンから50万ドンまでの紙幣が流通しています。100ドンと200ドン紙幣はほとんど流通しておらず、500ドン紙幣も地方でのみ使用される程度です。都市部では、5000ドン単位、観光地では1万ドン単位の価格設定が一般的です。1万ドン以上の紙幣は偽造防止のため、ポリマー紙幣となっています。旧5万ドンと旧10万ドン紙幣は既に流通停止となっています。また、2016年には中央銀行65周年を記念した100ドン紙幣が発行されましたが、これは記念紙幣であり決済には使用できません。ポリマー紙幣の1万ドン紙幣には、桁区切りの「.」が抜けているという特徴があります。これは原版作成時のミスによるものですが、そのまま流通しています。

紙幣のデザイン

紙幣の表面には、ほとんどの場合、初代国家主席であるホー・チ・ミンが描かれています。裏面には、発行年と、ベトナムの様々な場所や物が描かれています。例えば、1000ドン札にはタイグエン省で象が木材を運搬している様子が描かれています。

硬貨

200ドン、500ドン、1000ドン、2000ドン、5000ドンの硬貨が存在しますが、流通は稀です。これらの硬貨にはホー・チ・ミンの肖像ではなく、ベトナムの国章が刻印されています。2011年に発行が停止されましたが、法的には有効です。

まとめ

ベトナムの通貨「ドン」は、その歴史の中で様々な変遷を遂げ、現在もインフレとの闘いを続けています。小額な単位であること、そして紙幣のデザインにベトナムの歴史や文化が反映されていることは、ベトナムの社会や経済を知る上で興味深い点です。

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