ドンベヤ・バージェシアエ

ドンベヤ・バージェシアエ (Dombeya burgessiae)

ドンベヤ・バージェシアエは、アオイ科ドンベヤ属に分類される常緑樹です。アフリカを原産地とし、温暖な地域では庭木としても栽培されています。日本のような温帯地域でも屋外での越冬が可能で、比較的育てやすい植物です。

分布

原産地は南アフリカ東部で、アンゴラ、ウガンダ、ケニア、コンゴ民主共和国、ザンビア、ジンバブエ、スワジランド、タンザニア、マラウイ、南アフリカ、南スーダン、モザンビーク、ルワンダなどアフリカの広範囲に自生しています。また、インド（アンダマン諸島、ニコバル諸島）、コロンビア、トリニダード・トバゴ、フィジー、ミャンマーなどにも移入されています。かつてはアビシニア（現在のエチオピア）やナイル河岸でも採取された記録があります。

特徴

ケニアでは、通常5メートルほどの小低木ですが、10メートルに達する個体も存在します。葉は大きく、長さ約30センチメートルにもなり、時には3裂します。葉の表面は毛で覆われ、長い葉柄を持ち、広卵型で基部が心臓型、先端は尖っています。縁には細かい鋸歯があります。

花は直径約2～4センチメートルで、受け皿のような形をしています。散房花序、集散花序、円錐花序を形成し、白色や紅色、または白色に紅色の筋が入った花が20個ほど集まって、葉腋から下垂して咲きます。雄蕊は15本あり、内側の5本は大きく、葯の直下の花糸が膝状に曲がっています。残りの10本の雄蕊は小さく、花糸は直立しています。仮雄蕊が5本あり、花粉を生産しないへら状の構造をしています。自家受粉を行い、長い雄蕊が短い雄蕊の花粉を雌蕊に運びますが、ハチを惹きつける芳香と蜜を持つという特徴も持ちます。ケンブリッジ大学植物園の観察記録によると、花はハチに好まれるものの、ハチが必ずしも主要な花粉媒介者とは断定できないとされています。

利用

ケニアのキクユ族の間では、「ムケオ」として知られ、樹皮の繊維から紐が作られ、新生児の臍の緒を切る際に使用されてきました。また、根は他の植物の根と共に煮て、風邪の治療薬として用いられました。日本では、ドンベヤ・ウォリッキーと共に花木として流通しており、比較的寒さに強く、関東南部以南であれば屋外で越冬可能です。また、ドンベヤ・バージェシアエとドンベヤ・ウォリッキーの種間雑種として、カイオイキシイという園芸品種も存在します。

諸言語における呼称

キクユ語: mũkeũ（モケオ）
ナンディ語: silipchet /sílìp-céːt/（スィリプチェート）
ルオ語: owich

シノニム

以下は、本種のシノニムとして扱われることがあります。

Dombeya angulata Cav.
Dombeya mastersii Hook.f.
Dombeya mastersii var. angustifolia K.Schum.
Dombeya mastersii var. latifolia K.Schum.
Dombeya elegans K.Schum. (一部の分類では Dombeya tiliacea のシノニム)

参考文献

Bayer, C. and K. Kubitzki (2003). "Malvaceae." In Klaus Kubitzki and Clemens Bayer (eds.), Flowering Plants · Dicotyledons: Capparales, Malvales and Non-betalain Caryophyllales (The Families and Genera of Vascular Plants / edited by K. Kubitzki; 5), pp. 225–311.
Creider, Jane Tapsubei; Creider, Chet A. (2001). A Dictionary of the Nandi Language. Köln: Rüdiger Köppe Verlag.
Hassler, M. (2018). World Plants: Synonymic Checklists of the Vascular Plants of the World (version Apr 2018).
Kokwaro, John O.; Johns, Timothy (1998). Luo Biological Dictionary. East African Educational Publishers.
Leakey, L. S. B. (1977). The Southern Kikuyu before 1903, volumes I–III. London and New York: Academic Press.
Maundu, Patrick and Bo Tengnäs (eds.) (2005). Useful Trees and Shrubs for Kenya, pp. 207–8. Nairobi, Kenya: World Agroforestry Centre—Eastern and Central Africa Regional Programme (ICRAF-ECA).
The Plant List (2013). Version 1.1.
Rao, D K; Kaur, J J (2009). NEW Living Science BIOLOGY for CLASS 9. Delhi: Ratna Sagar.
Yeo, P.F. (1993). Secondary Pollen Presentation. Form, Function and Evolution. Plant Systematics and Evolution, Supplentum 6.
Hooker, J. D. (1867). “Dombeya mastersii”. Curtis's Botanical Magazine 93: Tab. 5639.
Masters, M.T. (1867). “Dombeya angulata, Cav.”. The Gardners' Chronicle and Agricultural Gazette 1867:
坂﨑信之 主著『日本で育つ 熱帯花木植栽事典』アボック社、1998年。
林弥栄、古里和夫 監修『原色世界植物大圖鑑』北隆館、1986年。
クリストファー・ブリッケル 編集責任、横井政人 監訳『A-Z園芸植物百科事典』誠文堂新光社、2003年。
* 杜由木『在りし日 牡羊を屠り 家へ帰る ケニア山のふもとに暮らした人びとの〈伝統・儀礼の書〉を読み解く』東京図書出版、2016年。

もう一度検索