ドン・ルイス・デ・ボルボーン親王の肖像

ドン・ルイス・デ・ボルボーン親王の肖像

『ドン・ルイス・デ・ボルボーン親王の肖像』は、スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤによって1783年に制作された作品です。この絵画は、国王フェリペ5世の息子であるドン・ルイス・アントニオ・デ・ボルボーン・イ・ファルネシオ親王の肖像を描いています。ロマン主義の画家として名高いゴヤの初期の作品の一つであり、特に親王が描かれた姿勢や服装、表情に特徴が見られます。

人物紹介

ドン・ルイス親王は1727年7月25日、スペインの国王フェリペ5世とエリザベッタ・ファルネーゼの第二子として生まれました。彼は子供のころから聖職者に任命され、セビーリャ大司教にもなりましたが、1754年には聖職を辞し、貴族の地位を引き継ぎました。1759年、異母兄のフェルナンド6世が亡くなると、彼は自らの王位を主張しますが、カルロス3世がスペイン国王としての地位を得ました。1776年には身分の違いを乗り越えてサラゴサのマリア・テレサ・デ・バリャブリガと結婚し、アビラ県にモスケラ宮殿を建設しました。親王はこの地で多くの文化的な活動を支持し、その時代はアレナス・デ・サン・ペドロにおける文化の黄金期となります。1785年に彼がこの世を去るまでの8年間は、彼の後援のもとで著名な建築家や画家、作曲家たちが集まり、文化の発展が促進されました。

制作背景

ゴヤがアレナス・デ・サン・ペドロを訪れたのは1783年で、その期間中にドン・ルイス親王と家族の肖像画を多数制作しました。彼が手掛けた中でも特に有名な作品は、親王一家を描いた集団肖像画『ドン・ルイス・デ・ボルボーン親王の家族』です。本作品は、その準備として制作されたものであり、夫人の肖像画とともに描かれています。興味深いことに、夫人の作品にはゴヤが描いた日付と時間が記されており、彼がわずかな時間で技巧を駆使して仕上げた様子が伺えます。

作品の特徴

本作では、ドン・ルイス親王が暗い背景に浮かび上がるように配置されています。彼は白いシャツとレースのジャボに、カルロス3世勲章の青いサッシュや金羊毛勲章の赤いサッシュをかけ、ドレスコートを羽織っています。また、色は濃い青のリボンで束ねられた短いポニーテールで整えられ、彼の穏やかな性格が見事に表現されています。特に、彼の青い瞳は強調され、その透明感や肌の色、顔の輪郭の描写はゴヤの技術の高さを示しています。親王の安らかな表情の裏に感じる少しの疲れと高潔さは、ゴヤの繊細な表現を通じて強調されています。

来歴と保存

この作品は、アレナス・デ・サン・ペドロで親王のために描かれた後、ボアディーリャ・デル・モンテのドン・ルイス親王宮殿に移されました。続いて、彼の子孫であるチンチョン伯爵と伯爵夫人の所有となり、その後スエカ公爵一家に相続されました。作品は良好な保存状態を維持しており、細部にわたる正確な仕上がりが確認できます。

複製とギャラリー

本作の複製はマドリードのミラフローレス・コレクションおよびカーサ・ポンテホス侯爵のコレクションに所蔵されており、多くの人々に視覚的な歴史を伝えています。ゴヤの才覚を感じさせるこの作品は、彼の他の肖像画と共に、歴史的な重要性を持つ一幅として評価されています。

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