ナイジェル・ブルース

ウィリアム・ナイジェル・ブルース：多才な俳優の人生

ウィリアム・ナイジェル・ブルース（William Nigel Ernle Bruce）は、1895年2月4日にメキシコのエンセナーダで生を受けた、イギリスの著名な俳優である。彼は一世を風靡した性格俳優として知られ、特に映画やラジオドラマで演じたワトソン医師の役柄で多くの観客の記憶に残っている。ブルースは1946年まで続いたベイジル・ラスボーン主演の「シャーロック・ホームズ」シリーズでワトソンを演じ、彼の演技は多くのファンにとってワトソンの定番イメージを確立した。

幼少期と教育

ブルースは、サー・ウィリアム・ウォーラー・ブルースとその妻アンジェリカの次男として誕生した。彼の母はジョージ・セルビー将軍の娘であり、文化的な家庭に育った。幼少期にはスティーブニッジやオックスフォードシャーで教育を受け、自身の演技の基礎を築くことになる。

軍歴と舞台キャリアの始まり

ブルースは1914年に第一次世界大戦に士官として従軍したが、カンブレーの戦いで重傷を負い、長い間車椅子生活を余儀なくされた。戦後の1920年に彼はロンドンで演じ、やがてカナダへ渡り、舞台『Eliza Comes』でモンタギュー・ジョーダン役として活躍し始める。この経験が彼のキャリアにおいて確固たる土台となった。

映画界への進出

1934年にハリウッドに移り住むと、ブルースは映画界での存在感を強め、78本もの映画に出演することになった。特に『宝島』や『進め龍騎兵』、そしてアルフレッド・ヒッチコック監督の『レベッカ』や『断崖』などが代表作として挙げられる。彼の演じるキャラクターは、しばしば「おどけた紳士」として描かれ、その独特の魅力で多くの観客を惹きつけた。特に、1935年の『虚栄の市』は初めての総天然色長編映画としての評価を受け、1952年の『ブワナの悪魔』は初の3D映画として記録された。

ワトソン医師としての名声

ナイジェル・ブルースの名声は、彼が演じたワトソン医師に大きく起因している。彼のワトソンは、原作の知的なキャラクターとは異なり、少々おどけた性格が強調された。この演技スタイルは、多くのファンに親しまれ、「ワトソン医師と言えばナイジェル・ブルース」と言われるほどの影響を与えた。ただし、原作ファンの中には、彼の描き方に異議を唱える声もあった。

プライベートライフ

1921年に女優のヴァイオレット・キャンベルと結婚し、彼女に「バニー」と愛称を付けて呼び合う仲であった。2人の間には2人の娘が生まれ、ブルースは家族を大切にした。友人からは「ウィリー」と愛称で呼ばれていた彼は、ロサンゼルスでもイギリス人映画集団の中心的なメンバーとして活躍し続けた。

最後の年日

ブルースは1953年にカリフォルニア州で心筋梗塞により58歳で亡くなった。彼の遺灰はパインズ火葬場に保管されている。生前に書かれた自伝があるが、未出版のままであり、抜粋は後に『Sherlock Holmes Journal』に掲載された。彼の影響は今なお続いており、映像の中でのワトソン像は彼の印象から強く影響を受けている。ブルースの多彩な演技と愛らしいキャラクターは、映画史において忘れがたい存在として語り継がれている。

もう一度検索