ナイス (バンド)

ナイス（The Nice）

ナイスは、1960年代後半にイギリスで活動していたロックバンドで、プログレッシブ・ロックの先駆けとして位置付けられています。特にキーボーディストのキース・エマーソンが在籍していたことで知られ、彼の独特な演奏スタイルは多くのファンに愛されました。バンドは結成当初、キーボード、ギター、ベース、ドラムの4人編成でしたが、デビューから約1年後にはキーボードトリオに再編成されました。

バンドの結成と初期の活動

ナイスは1967年5月に、シンガーのP・P・アーノルドのバックバンドとして結成されました。メンバーはエマーソンを中心に、リー・ジャクソン（ベース）、デヴィッド・オリスト（ギター）、イアン・ヘイグ（ドラマー）という顔ぶれでした。彼らはアーノルドが従事するライブ活動の一環として演奏を始めましたが、エマーソンは自らのバンドとしてのパフォーマンスの場も求め、次第にアーノルドの存在が薄れていきました。バンドはその後、ウィンザーのジャズフェスティバルでのパフォーマンスを通じて人気を集め、マネージャーにオールダムを迎えてからは、マーキー・クラブでの定期公演も行うようになります。

その後、ヘイグの解雇やブライアン・デヴィソンの加入を経てバンドは再編成され、より固い関係で音楽活動を続けました。1967年9月には独立したバンドとして本格的に活動をスタートさせました。

デビューと成功

ナイスは1967年11月にデビューシングル「The Thoughts of Emerlist Davjack」を発表し、1968年1月にはアルバム『ナイスの思想』をリリースしました。ライブパフォーマンスではエマーソンがハモンドオルガンを駆使し、時にはナイフを突き刺す派手な演出も行い、観客を魅了しました。同年4月には、マネージャーとの不満から新たにトニー・ストラットン・スミスと契約を結び、さらなる音楽的冒険に乗り出します。7月には「アメリカ」を含むカバー曲が大ヒットし、全米単曲チャートで29位にランクインしました。

音楽スタイルと革新

ナイスの音楽スタイルは、クラシック音楽やジャズの要素を取り入れたものであり、メンバー各自の対話を活かした演奏が特徴でした。1969年には新たなアルバムの収録やアメリカツアーが行われ、音楽性の深化に努めました。特に、ジョセフ・イーガーとの共演により、クラシックとロックの境界を越える試みに挑戦しました。

しかし、その一方でメンバー間の音楽的意見の不一致も生じ始めました。エマーソンはキング・クリムゾンのグレッグ・レイクとの新しいバンド結成を考えるようになり、1970年には正式にナイスは解散を迎えました。この頃、カリスマ・レコードから過去のライブが収録されたアルバムがリリースされ、バンドの評価は残り続けました。

解散後の活動

解散後、エマーソンはレイクと共に「エマーソン・レイク・アンド・パーマー（ELP）」を結成し、さらに大成功を収めました。ジャクソンはソロプロジェクト「ジャクソン・ハイツ」を立ち上げ、デヴィソンは「エヴリ・ウィッチ・ウェイ」を結成しました。各メンバーは独自の道を歩んだものの、ナイス時代を超えた成功は見られませんでした。

2002年にはナイスのメンバーが再集結し、ツアーを行ったものの、2003年にはエマーソンのソロアルバムが発表されるなど、各自がそれぞれの音楽活動に邁進しました。しかし、2008年にはデヴィソンが他界し、2016年にはエマーソンも命を絶ってしまいました。ナイスの音楽は今も多くのファンに影響を与え続けています。

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