ナイトメア・シティ (映画)

ナイトメア・シティ

概要

『ナイトメア・シティ』は、1980年に製作されたイタリア・スペイン合作のホラー映画です。ウンベルト・レンツィが監督を務めた本作は、従来のゾンビ映画とは一線を画す独自のクリーチャー設定と、絶望的な都市崩壊の様相を描き出し、公開当時大きな話題となりました。日本では『ゾンビドローム』、『吸血魔の街』、『悪夢!恐怖の異生物』など複数の異なるタイトルで公開されています。

あらすじ

物語は、原子力発電所での放射性物質漏洩事故について取材すべく、記者のディーン・ミラーが空港へ向かう場面から始まります。しかし、空港に到着した軍用機から姿を現したのは、見るも無残に変異した人間たちでした。彼らは即座に警備にあたっていた警察官から武器を奪い、次々と殺害しながら都市の中心部へと向かい、無差別に市民を襲い始めます。

ディーンは、この異常事態をテレビを通じて市民に伝えようとしますが、軍のマーチソン将軍は、混乱を避けるためとして報道を阻止します。そうこうしているうちに、変異した者たちの集団はテレビ局に押し寄せ、局内はパニックに陥ります。ディーンは辛うじてテレビ局から脱出し、医師である妻アンナを救うため病院へ急ぎますが、病院にも既に異形の影が迫っていました。アンナと再会したディーンは、迫りくる脅威から逃れるため、車で都市からの脱出を図ります。

空港で確保された変異体の遺体から、彼らが放射線の影響で身体能力が異常に向上した人間であり、体組織の崩壊を補うために人間の血を求め、襲われた者に感染が拡大していくことが判明します。しかし、変異の初期段階では外見が一般人と区別できないため、軍の対応は後手に回らざるを得ませんでした。発電所をはじめとするインフラが次々と破壊され、空軍基地まで制圧されるに至り、事態は急速に悪化の一途をたどります。

クリーチャー設定

本作に登場する異生物は、単なる思考を持たないゾンビではなく、原子力発電所事故による特殊な放射能によって汚染され、怪物化した人間であると監督は語っています。彼らは変異により驚異的な身体能力を獲得しており、俊敏に走ることが可能です。さらに、崩壊していく自らの体組織を維持するため、人間の血を求め、襲った相手の血を吸うことで感染を拡大させます。

特筆すべきはその知能です。彼らは銃器や刃物を使いこなし、自動車を運転することも可能です。顔の変異がまだ進んでいない個体は、人間を騙して軍事施設への侵入を試みるなど、人間並みの狡猾さや戦略性を見せる演出が盛り込まれています。これは、従来の鈍重で知性のないゾンビ像を打ち破る、本作の最も特徴的な点の一つと言えます。

製作背景

監督のウンベルト・レンツィは、当初渡された脚本に不満を持ち、イタリアのセベソで実際に発生したセベソ事故を題材として、物語を大幅に練り直しました。このため、作中のクリーチャーは一般的な「ゾンビ」ではなく、「放射能によって汚染され変異した人間」として明確に位置づけられています。クリーチャーの特殊メイクアップは、監督の友人であるジュゼッペ・フェランティが主に担当しました。

主演のディーン・ミラー役には、製作側の意向で当時スターだったメキシコ人俳優ヒューゴ・スティグリッツが起用されました。しかし、レンツィ監督は彼の演技力を低く評価しており、自身であればフランコ・ネロやファビオ・テスティ、ジョン・サクソンといった俳優を希望したと後に語っています。

主なキャスト・スタッフ

キャスト
ディーン・ミラー - ヒューゴ・スティグリッツ
アンナ・ミラー - ラウラ・トロッター
シーラ・ホームズ - マリア・ロザリア・オマジオ
ウォーレン・ホームズ少佐 - フランシスコ・ラバル
マーチソン将軍 - メル・ファーラー

スタッフ
監督：ウンベルト・レンツィ
製作：ディエゴ・アルシメード、ルイス・メンデス
脚本：ピエロ・レニョーリ、アントニオ・チェザーレ・コルチ、ルイス・マリア・デルガド
撮影：ハンス・バーマン
音楽：ステルヴィオ・チプリアーニ
特殊メイクアップ：フランコ・ディ・ジロラモ、ジョゼッペ・フェランティ
編集：ダニエレ・アラビソ

日本での展開

本作は前述のように複数の邦題で紹介されましたが、特に1987年 1月3日には毎日放送の『未公開ホラーナイト』枠にて、『悪夢!恐怖の異生物』というタイトルで日本語吹き替え版がテレビ放送されました。このTV版吹き替えは、堀勝之祐や吉田理保子といった声優が出演しており、後にこの吹き替え版を収録したDVDソフトもリリースされています。

外部リンク

allcinema
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