ナウルの歴史

ナウルの歴史は、ミクロネシアの島国としての長い歴史と、近現代における外部からの影響、そして資源に翻弄された歴史が複雑に絡み合っています。

先史時代

ナウル人がナウル島に最初に渡来したのは、紀元前2000年頃と推定されています。彼らは西方からカヌーでやってきたと考えられ、近隣のマーシャル諸島やキリバスといったミクロネシアの島々との文化的な繋がりを持っていました。また、メラネシア文化からの影響も受けており、古代にはメラネシアとの交流があったことを示唆しています。地元の伝承によれば、複数回にわたり、異なる方向から様々な集団が島に渡来してきたと伝えられています。

近代

ヨーロッパ人との接触

1798年、イギリスの捕鯨船ハンター号のジョン・ファーン船長がナウル島を発見し、「プレザント島（Pleasant Island）」と名付けました。1830年代から1840年代にかけては、食料や水を求めて捕鯨船や、ビーチコーマーと呼ばれる白人漂流者が島に立ち寄るようになりました。しかし、島民が度々捕鯨船を襲撃したため、次第に捕鯨船はナウル島に近づかなくなりました。1852年には、大砲の購入をめぐるトラブルから、島民がアメリカの軍艦インダ号を拿捕し、船長と乗組員を殺害するという事件も発生しています。

1870年代末には、結婚式の席で起きた射殺事件をきっかけに部族間の紛争が勃発し、10年近くにわたって続きました。当時、島内にはヨーロッパ人が残していった多くの武器が出回っており、紛争を激化させる要因となりました。この紛争によって、島の人口は1000人以下にまで減少してしまいました。

1888年 10月1日、ドイツは36名の兵士を派遣し、ビーチコーマーのウィリアム・ハリスの仲介によって島民を武装解除しました。

植民地時代

1888年4月、ナウルはドイツの保護領となりました。1899年には、ニュージーランドの地質学者アルバート・エリスがリン鉱石の鉱床を発見します。ドイツは採掘権をイギリス資本の太平洋リン鉱石会社に与え、1907年から採掘が開始されました。

第一次世界大戦が勃発すると、1914年11月にオーストラリア軍がナウル島を占領しました。戦後の1920年には、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの3国が施政国となり、国際連盟委任統治領となりました。同時に、3国は太平洋リン鉱石会社の採掘権を350万ポンドで買収し、イギリス燐鉱石委員会と呼ばれる機関を通じて採掘を行うことになりました。

第二次世界大戦中、1940年12月にはドイツ軍がリン鉱石を積んだ貨物船を撃沈しました。1941年12月には日本軍の攻撃により、採掘施設や住宅が破壊されました。1942年8月には日本軍がナウル島を占領し、1200人の島民がトラック諸島へ移送され、多くの島民が命を落としました。また、日本軍がハンセン病患者を別の島に移送すると偽って殺害した事実も明らかになっています。ナウルの人口は、1940年の1848人から1946年には1369人にまで減少しました。

第二次世界大戦後、1947年には再びイギリス、オーストラリア、ニュージーランドの3国が施政国となり、国際連合信託統治領となりました。

1951年には、それまで存在した首長評議会が西洋化され、地方政府評議会が発足し、ハマー・デロバートがトップに就任しました。これは、首長評議会の権限が限定的であったため、自治を求める動きが活発化した結果です。しかし、依然として行政当局の権限が強かったため、自治権拡大を求める運動が続きました。

1963年または1964年には、オーストラリアが島民をクイーンズランド州に近いカーティス島に移住させる計画を提案しましたが、実現には至りませんでした。

独立後

1966年には信託統治理事会の支持を得て公選制による住民議会が発足し内政自治を獲得、1968年 1月31日に独立を果たしイギリス連邦に加入しました。

1980年代には、リン鉱石の輸出によって得た莫大な収入により、公共料金や税金が無料になるなど、太平洋地域で最も高い生活水準を誇りました。リン鉱石の枯渇に備えて、政府は利益を基金化し、太平洋各地に不動産資産を保有するなど投資も行いましたが、放漫経営や詐欺被害によって莫大な損失を出すこととなりました。その後のリン鉱石の枯渇によって、政府は深刻な財政危機に瀕することとなりました。

2001年9月に発生したタンパ号事件を受けて、ナウルは難民の審査と収容を引き受けることでオーストラリアと合意しました。危機的な経済状況にあったナウルは、難民収容施設を2か所開設するのと引き換えに、オーストラリアから経済援助を受けることになりました。しかし、収容の長期化に対して難民が2003年末にハンガーストライキなどで抗議を行ったことで、国際社会から非難が集まりました。2007年にオーストラリアで労働党のケビン・ラッド政権が成立すると、新政権は収容所の閉鎖を決定し、収容所は2008年に閉鎖されました。しかし、2012年には収容施設を再開し、オーストラリアの援助と引き換えに難民を受け入れています。

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