ナカドーチェス (テキサス州)

ナカドーチェス（Nacogdoches）は、アメリカ合衆国テキサス州東部に位置する歴史と文化が豊かな都市です。ヒューストンの北東約225km、ダラス・フォートワースの南東約290kmに位置し、ルイジアナ州との州境に近い場所にあります。2010年の国勢調査によると、市内の人口は約3万3千人、ナカドーチェス郡を含む小都市圏では約6万5千人が暮らしています。

歴史

ナカドーチェスは「テキサス州最古の町」と呼ばれ、その歴史は1716年にスペインによって建てられた伝道所に遡ります。1779年には、スペイン人交易者アントニオ・ギル・イバルボとその一団によって町が創設されました。町の中心部に建てられた「オールド・ストーン・フォート」は、後にアメリカ合衆国からテキサス辺境への玄関口として重要な役割を果たすようになりました。

ナカドーチェスは、歴史上「テキサスの六旗」として知られるスペイン、フランス、メキシコ、テキサス共和国、アメリカ合衆国、アメリカ連合国の支配を受けたほか、グティエレス・マギー探検隊、ロング共和国、フレドニア共和国の旗も翻りました。この地が9つの旗の下で歴史を刻んできたことは、ナカドーチェスの多文化な歴史を象徴しています。

10,000年前には既に人が住み着いていた痕跡があり、カドー族のネイティブ・アメリカンがこの地にネバンティンという村を築いていました。1716年、スペインはヌエストラ・セニョーラ・デ・グアダルーペ・デ・ロス・ナカドーチェスという伝道所を建設し、これがこの地におけるヨーロッパ人の最初の建物となりました。しかし、1760年代に入るとフランスが撤退し、スペインも伝道所の維持費を考慮し、1772年にはスペイン人入植者全員にサンアントニオへの撤退を命じました。

1779年、アントニオ・ギル・イバルボ大佐がグループを率いてナカドーチェスに戻り、スペインはナカドーチェスを「町」として指定しました。イバルボは町の副総督として法規を制定し、街路を区画しました。エル・カミノ・レアル（オールド・サンアントニオ・ロード）とラ・カジェ・デル・ノルテ（ノース・ストリート）の交差点が町の中心とされ、石造の家屋が建てられました。これが現在の「オールド・ストーン・フォート」です。

1820年代に入ると、アメリカ人が入植し始め、テキサス初の英語紙が刊行されました。1832年のナカドーチェスの戦いでは、入植者たちが連邦制を支持して戦い、メキシコ軍を東テキサスから追放しました。

トーマス・ジェファーソン・ラスクは、ナカドーチェスの著名な初期入植者の一人です。テキサス独立戦争で活躍し、テキサス共和国の陸軍長官を務め、テキサスが連邦に加入した際には連邦議会上院議員を務めました。また、ナカドーチェス大学の創立にも尽力しました。

サミュエル・ヒューストンも、テキサス独立戦争までの4年間、ナカドーチェスに住み、法律事務所を開いていました。

1859年にはテキサス初の油井が操業を開始しましたが、南北戦争により中断しました。戦後、別の採掘権を得て再び石油を掘り当てましたが、原油価格の暴落によりプロジェクトは頓挫しました。その後、油田は休止状態となりましたが、1889年に複数の採掘会社によって再び開発されました。

南北戦争後、ナカドーチェスは他の南部地域と同様に停滞しましたが、1880年頃にはレンガ造りの建物が建ち並び、銀行も設立されました。1882年には鉄道が開通し、1923年にはスティーブン・F・オースティン師範学校（後のスティーブン・F・オースティン州立大学）が開校しました。

2003年2月1日、スペースシャトル「コロンビア号」の空中分解事故により、ナカドーチェス周辺に多くの残骸が散乱しました。また、2005年にはハリケーン・リタが通過し、避難民や物資不足が発生しました。

2008年には、市中心部がナカドーチェス・ダウンタウン歴史地区として国家歴史登録財に登録されました。

地理

ナカドーチェスは北緯31度36分14秒、西経94度39分22秒に位置し、テキサス州東部のメキシコ湾岸平原内陸部に位置します。市の標高は91mで、総面積は69.96km2です。

気候

ナカドーチェスの気候は、蒸し暑い夏と温暖な冬が特徴の亜熱帯性気候です。夏の最高気温は平均34℃、冬の平均気温は9℃程度で、降水量は年間1,190mm程度です。

政治

ナカドーチェスはシティー・マネージャー制を採用しており、市議会が任命したシティー・マネージャーが行政の最高責任者となります。市議会は市長と4人の市議員で構成されています。

経済

ナカドーチェスの経済はスティーブン・F・オースティン州立大学に大きく依存しており、大学は最大の雇用主です。その他、畜産業、製材業、製造業も重要な産業です。コールセンターのイーテックや鶏肉加工のピルグリムズも主要な雇用主です。

交通

ナカドーチェスに最も近い商業空港は、ロングビューのイースト・テキサス地域空港です。また、シュリーブポート地域空港も利用可能です。市内には国道59号線が通っており、ヒューストンやテクサーカナと結ばれています。公共交通機関としては、バスが利用できます。

教育

スティーブン・F・オースティン州立大学は1923年に設立された州立総合大学で、約13,000人の学生が在籍しています。ナカドーチェス独立学区は小学校から高校までの教育を管轄し、約6,500人の生徒が在籍しています。

文化と名所

スティーブン・F・オースティン州立大学のキャンパス内には、オールド・ストーン・フォートのレプリカ博物館があります。また、ルビー・M・マイズ・ツツジ園もキャンパス内にあり、美しい植物を楽しむことができます。

ストーン・ホヤ邸博物館・図書館は、1830年に建てられた歴史的な邸宅で、博物館と図書館として利用されています。ダースト・テイラー邸は、1835年に建てられた家屋で、博物館として公開されています。

毎年6月には、テキサス・ブルーベリー・フェスティバルが開催されます。また、シンガーソングライターのウィリー・ネルソンがナカドーチェスで録音した曲が収録されたアルバム「ナカドーチェス」も有名です。

姉妹都市

ナカドーチェスは、日本の鹿児島県奄美市と姉妹都市提携を結んでいます。

この街は、歴史と文化、そして豊かな自然が調和した魅力的な都市です。

もう一度検索