ナガハナコビトザメ

ナガハナコビトザメ（Heteroscymnoides marleyi）

ナガハナコビトザメは、ヨロイザメ科に属するサメの一種であり、非常に珍しい生物です。このサメは、ナガハナコビトザメ属の唯一の種であり、その存在は南半球の寒冷な外洋域に限られています。具体的には、水深500メートル以浅の深海で生息していることが知られており、これまでにわかっている個体数は限られています。

特徴

最大で37センチメートルに成長するこのサメは、細長い体型を持ち、長い吻が特徴的です。また、体表は暗褐色であり、第一背鰭は胸鰭の上方に位置しています。ナガハナコビトザメは小型ながらも独特の形態を持ち、ナガハナコビトザメ属はその特異性から単型属とされています。

分類と歴史

ナガハナコビトザメは、1934年にアメリカの動物学者ヘンリー・ウィード・ファウラーによって記載されました。彼は本種をHeteroscymnusという属名の下に分類し、種小名の「marleyi」は南アフリカにおける魚類学の発展に貢献したHarold Walter Bell-Marleyに由来しています。ファウラーは、このサメが他のオンデンザメ属に近いと考えましたが、その詳細な系統関係はまだ解明されていない部分があります。

生息地

ナガハナコビトザメは、インド洋のクワズール・ナタール州、大西洋南東部のウォルビス海嶺、さらに太平洋南東部のチリ沖といった場所で確認されており、南半球の寒流や亜南極域に広く分布していると考えられています。具体的には、水深830〜4000メートルの深海域で見られ、深度45〜502メートルに生息しています。この生息環境からは、彼らが外洋性特性を持っていることが示唆されています。

形態的特徴

ナガハナコビトザメは、細長く、側面は中程度に扁平です。頭部の吻は長く、全長の約半分を占め、先端は鈍い円錐形になっています。眼は大きく、瞬膜がない点も特徴です。口は直線的で、薄く滑らかな唇を持ち、上顎には22本、下顎には23本の歯があります。特に下顎の歯は大きさがあり、ナイフのような形状をしていて、食事を効率的に行うための適応が見られます。

背鰭の数は2基で、棘が無く、第一背鰭は胸鰭の基部上方から起こります。腹鰭は短く、尾鰭は発達しており、幅広い形状で下葉の発達が目立ちます。また、全体的な体色は暗褐色ですが、鰭の縁は明確に黒色から明色へのグラデーションがあり、腹面は細かい発光器に覆われています。

生態

ナガハナコビトザメの生態については、多くのことが未知ですが、他のヨロイザメと同様に外洋性の魚類や無脊椎動物を食べていると考えられています。また、本種は無胎盤性胎生であると推測されており、出産数は少なくなる傾向があります。タイプ標本として知られている13センチメートルの個体には臍の跡があり、このサイズが出生時の大きさである可能性が高いです。性成熟は雄が36センチメートル、雌が33センチメートルと見られています。

人との関わり

ナガハナコビトザメは、これまでに科学的に観察された個体がわずか6匹に過ぎません。この小型の外洋性サメは、一般的に漁業で狙われることはないため、人間による影響は少ないとされます。広範な分布域を持ち、人間活動からは比較的保護されていると考えられ、そのため国際自然保護連合（IUCN）では、現状の保全状況を軽度懸念に分類しています。

このようにナガハナコビトザメは、まだ謎に包まれた存在であり、その解明が進むことが期待されています。

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