亜南極

亜南極とは



亜南極（あなんきょく、英語：Subantarctic）とは、地球の南半球に位置する、南極地域と温帯地域の間に広がる地域を指します。具体的には、南緯46度から60度付近の海域と、その中に点在する島々を包括します。この地域は、地理的、気候学的、生物学的に独自の特性を持ち、南極圏と温帯圏の境界として重要な役割を果たしています。

地理的特徴



亜南極地域は、大きく分けて二つの地理的区域と三つの前線で構成されています。北側の境界は、亜熱帯前線（亜熱帯収束線）と呼ばれる、比較的曖昧な区分で区切られています。その南には亜寒帯が広がり、亜南極前線、極前線帯へと続きます。亜寒帯と極前線帯を合わせて亜南極地域と定義されることが一般的です。亜南極地域の南限は、南極収束線によって画定されます。

海洋循環と気候



亜南極前線は、インド洋と太平洋では南緯48度から58度、大西洋では南緯42度から48度に位置し、南極環流の北側境界を形成します。南極環流は、地球を一周する唯一の海流であり、深海まで及ぶ巨大な水の流れを作り出しています。この環流は、地球全体の気候や海洋生態系に大きな影響を与えます。

亜南極地域の気候は、熱塩循環と密接な関係があります。熱塩循環は、表層の熱と蒸発によって生じる海水の密度差によって駆動され、地球規模での海洋循環を形成しています。また、亜南極モード水は二酸化炭素を吸収・貯留する役割を担っており、気候変動の影響を受けやすいと考えられています。

亜南極の定義



南極収束線付近には、亜南極表層水、亜南極モード水、南極表層水、南極中層水など、異なる性質を持つ水塊が集中しています。この収束線周辺は、特にナンキョクオキアミなどの生物生産性が高く、独特の生態系を形成しています。このため、南極収束線以南は、気候学的、生物学的、水文学的な観点から南極に属すると考えられます。

ただし、政治的には、南極条約により南緯60度以南が南極と定義されています。したがって、亜南極地域は、南緯60度以北で、南極収束線以南の地域を指すことが多いです。

亜南極諸島



亜南極地域には、多数の島々が存在します。これらの島々は、緯度や地理的条件によって気候や植生が異なり、独自の生態系を育んでいます。


亜南極における歴史的エピソード



第二次世界大戦中、ニュージーランドの科学者たちが、コースト・ウォッチャーズとして亜南極諸島に滞在しました。これは、ドイツ海軍の通商破壊艦艇を監視する名目でしたが、同時に科学研究を進める目的もありました。この活動は「岬の遠征」として知られています。

気候変動の影響



亜南極モード水は、二酸化炭素を吸収・貯留する重要な役割を担っています。しかし、気候変動によって水温が上昇すると、二酸化炭素の吸収量が減少する可能性があります。コンピューターモデルによる研究では、大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、亜南極モード水の塩分濃度と密度が低下し、二酸化炭素の吸収能力が低下する可能性が示唆されています。

植物相と動物相



ハード島とその周辺の島々は、火山活動、強風、波、気候変動によって常に景観が変化しています。火山活動によって新しい陸地が形成され、氷河が後退することで、モレーンやラグーンといった新たな生態系が生まれています。これらの地域には、ペンギン、ペトレル、ゾウアザラシ、オットセイなど、多様な動植物が生息しています。

亜南極の氷河



亜南極地域に存在する氷河は、定義によって異なりますが、南極大陸の氷河とは区別されます。近年、多くの亜南極氷河は後退しており、その現象は地球温暖化の進行を反映していると考えられています。

氷河後退



南半球全域で、氷河の著しい後退が観測されています。アンデス山脈、ニュージーランド、南極などの氷河が減少しており、亜南極の氷河も同様の傾向を示しています。ケルゲレン諸島、ハード島、サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島、ブーベ島など、多くの島の氷河で質量収支がマイナスになっています。

関連項目




出典



(省略)

外部リンク



(省略)

もう一度検索

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。