ナクシュバンディー教団

ナクシュバンディー教団とは

ナクシュバンディー教団（Naqshbandīyah）は、イスラム神秘主義であるスーフィズムの一派であり、14世紀に中央アジアのブハラで誕生しました。この教団は、創始者であるバハー・ウッディーン・ナクシュバンド（Bahā' al-Dīn Naqshband、1318-1389）の名にちなんで名付けられました。

教団の起源

バハー・ウッディーン・ナクシュバンドは、元々ホージャ・アブド・アルハーリク・グジドゥワーニー（Abd al-Khāliq Ghijduwānī、1103-1179）が創設したホージャガーン教団に属していました。この教団は、中央アジアを中心に活動し、後にナクシュバンディー教団として発展しました。

ホージャの役割

ナクシュバンディー教団において重要な役割を果たしたのが「ホージャ」と呼ばれる指導者層です。特にアフマド・カーサーニー（マフドゥーミ・アァザム、1464-1542）の子孫は、ティムール朝崩壊後の東トルキスタン（現在の新疆ウイグル自治区一帯）でウイグル人の指導者としての役割を担いました。彼らは17世紀から19世紀にかけて、この地域の政治に大きな影響力を持つようになり、「カシュガル・ホージャ家」とも呼ばれました。

イスハーキーヤ（黒山党）とアーファーキーヤ（白山党）

アフマド・カーサーニーの子孫は、大きく二つの系統に分かれました。

イスハーキーヤ（黒山党）: アフマド・カーサーニーの次男、ムハンマド・イスハーク・ワリー（?-1599）の系統です。彼はサマルカンドからカシュガル、ホータン、アクス、クチャを巡り、1599年にサマルカンドに戻りました。この系統は「カラタグルク（黒山党）」とも呼ばれました。
アーファーキーヤ（白山党）: アフマド・カーサーニーの長男、イーシャーニ・カラーン（ムハンマド・アミーン）の系統です。ムハンマド・アミーンの子、ホージャ・ユースフ（?-1652）が東トルキスタンに移住し、その子、ダーヤット・アッラー（ホージャ・アファークとして知られる）がこの系統を継ぎました。この系統は「イーシャーニーヤ」または「アクタグルク（白山党）」とも呼ばれました。

ホージャ・アファークの死後、息子のホージャ・ヤフヤーが継承しましたが殺害され、その後、チャガタイ家のアクバシュ・ハーンによって他の息子たちがインドへ送還されたとされています。

アーファーキーヤ（白山党）は、イスハーキーヤ（黒山党）との抗争に敗れ、東トルキスタンを追放されました。その後、1671年から1672年にかけて西寧（現在の青海省西寧市）に移り、そこで布教活動を行い、多くの中国ムスリム信徒（回民）を獲得しました。

白山党の一派には、アーファーク統が存在します。

その他の分派

ナクシュバンディー教団からは、さらにいくつかの分派が生まれました。

フフィー教団
イスマイル・アー教団

まとめ

ナクシュバンディー教団は、その創始者バハー・ウッディーン・ナクシュバンドの教えに基づき、中央アジアから東トルキスタンにかけて広範な影響力を持ったスーフィー教団です。特にホージャと呼ばれる指導者層は、地域の政治にも深く関わり、その歴史において重要な役割を果たしました。教団は、様々な分派に分かれながらも、その影響力を維持し続けました。

参考文献

川本正知「バハー・ウッディーン・ナクシュバンドの生涯とチャガタイ・ハン国の終焉」『東洋史研究』第70巻第4号、東洋史研究会、2012年3月
小松久男, 林俊雄, 梅村坦, 濱田正美, 堀川徹, 石濱裕美子, 中見立夫『中央ユーラシア史』山川出版社、2000年
新免康, 菅原純「カシュガル・ホージャ家アーファーク統の活動の一端 : ヤーリング・コレクション Prov.219 について」『東洋史研究』第61巻第3号、東洋史研究會、2002年12月
河原弥生「『ホージャ・ハサン・サーヒブキラーン伝』 : フェルガナ盆地における民間所蔵史料の研究」『アジア・アフリカ言語文化研究』第71巻、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2006年3月
清水学『テクニカルレポート：中央アジアのイスラームとイスラーム運動』（レポート）Graduate School of Economics, Hitotsubashi University、2004年

関連項目

ホージャ
ブルハン・アッディーン
ジャハーンギール・ホージャ
ウイグル

外部リンク

納格什班迪耶教団（簡体字中国語） 百度百科
* 納格什班迪耶教団（簡体字中国語） - 伊斯蘭之光 中国最早的伊斯蘭教宗教信仰网站

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