ナクパドン

ナクパドン（Nakpadon）: 重装甲兵員輸送車

ナクパドン（Nakpadon）は、イスラエルにおいて開発された重装甲兵員輸送車であり、1990年代に実際の部隊での運用が始まりました。名称である「ナクパドン」はヘブライ語で「ヤマアラシ」を意味し、その防御力の強さを象徴しています。開発においては、イギリスのセンチュリオン戦車（イスラエルでの呼称はショット）を基に、ナグマショット装甲兵員輸送車とナグマホン歩兵戦闘車の技術が取り入れられています。

概要

ナクパドンの設計は、戦闘室の防御力を大幅に強化することに重点が置かれています。兵員室は第三世代複合装甲や爆発反応装甲によって囲まれ、車体側面には更に厚みを増した複合素材が使用されています。このため、ナクパドンは非常に頑強な防御を誇り、最大10名の兵士を運ぶことができます。戦闘時の総重量は55トンを超えており、そのためエンジンも強化されています。具体的には、ナグマホンのAVDS-1790-2AC（750HP）から、メルカバMk.Iと同じ出力900HPのAVDS-1790-6Aへと変更されています。

武装については、ナクパドンは4つのFN MAG 7.62mm機関銃やソルタム60mm迫撃砲を搭載しており、戦闘時の自衛能力も十分に備えています。また、後部には対IEDの妨害用アンテナが装備され、前方には派生型のための昇降口が設けられている場合もあります。

実際の運用に関して、ナクパドンは治安維持活動として主にガザ地区やヨルダン川西岸地区に派遣されています。特にレバノン南部での作戦においては、イスラエル北部地域での連携が強化されています。

派生型

ナクパドンにはナクプーマ（Nakpuma）という派生型も開発されています。この型は、兵士の昇降が容易な通路を装備しており、主に特殊戦闘工兵部隊「ヤハロムル」の要請で製造されました。ナクプーマの開発は、2004年に発生した事故がきっかけでした。当時、ヤハロムのトンネル破壊部隊がM113装甲兵員輸送車を利用して作戦を行っていたところ、敵からの攻撃を受け、車両が爆発し多くの死傷者が出てしまいました。

このような背景から、M113では爆発物やEODロボットを運ぶには防御力が不十分であり、更にプーマ戦闘工兵車のような上面からのアクセス型車両も適していませんでした。また、アチザリット型は内部の広さも足りないことが判明したため、より防御力が高く傷害リスクを減少させるための設計として、ナクパドンに昇降ドアを追加する要望が生まれたのです。ナクプーマにはその防御力を向上させるためにケージ装甲（スラットアーマー）も装備されています。

まとめ

ナクパドンは、イスラエルの防衛力の一環として進化を遂げ、適応性や防御力に優れた兵員輸送車としての地位を確立しています。その派生型であるナクプーマもまた、特殊な任務に対応するために設計されています。これにより、ナクパドンは現代戦において重要な役割を担っていると言えるでしょう。

今後もナクパドンやその派生型がどのように発展し、運用されていくのか注目が集まります。

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