ナシクラブ

ナシクラブ：マレーシア東海岸の青い奇跡

マレーシア、特にクランタン州やトレンガヌ州といった東海岸地方で人気を博すナシクラブ（Nasi kerabu）は、その名の通りご飯とサラダを組み合わせた料理です。しかし、ただの米とサラダではありません。この料理の最大の特徴は、何と言ってもその鮮やかな青色のご飯です。

「ナシ」はマレー語でご飯、「クラブ」はサラダを意味します。そのため、ナシクラブは直訳すると「ご飯サラダ」となりますが、その実態は想像を超える彩り豊かで奥深い一品です。ナシクラブは、ご飯の種類や添えられる具材のバリエーションが豊富で、多様な楽しみ方ができる料理と言えるでしょう。

この美しい青色は、合成着色料など人工的なものではなく、蝶豆（ちょうず、学名：Clitoria ternatea、英名：butterfly pea）の花弁から抽出された天然の色素で着色されています。蝶豆はマレーシアでは「kembang telang」と呼ばれ、古くから食品や飲料の着色に使われてきました。米を炊く際に蝶豆の花弁を加えることで、ご飯は鮮やかな青色に染まります。

青色の米が主役ですが、白米やターメリックで色付けされた米が使われる場合もあります。ご飯と共に供されるのは、揚げた鶏肉や魚介類、香ばしく揚げられたクレープのような揚げ煎餅（keropok）、様々なピクルスなど。これらの具材は、ご飯の青色と見事に調和し、見た目にも華やかな一品を完成させます。特に、えびせんべいに似た食感の揚げ煎餅（keropok）は、ナシクラブには欠かせない存在です。

ナシクラブには、ソロッラダ（solok lada、唐辛子の入った漬物）が添えられることも多く、ピリッとした辛さがアクセントとなります。これらの具材は、それぞれの食感や風味がご飯と絶妙なバランスを保ち、複雑でありながら調和のとれた味わいを生み出します。

ナシクラブは、マレーシア東海岸地方の伝統料理ですが、近年ではタイ南部でも見かけることが増えました。タイ南部では「カーオヤム（khāoyam）」と呼ばれ、マレーシアのナシクラブと同様に親しまれています。地域によって微妙な違いはあれど、ご飯の色合いや具材の構成に共通点が見られ、東南アジアにおける食文化の交流を感じさせる料理と言えるでしょう。

ナシクラブは、単なる食事という枠を超え、マレーシアの豊かな食文化と歴史、そして自然の恵みを凝縮した料理と言えるでしょう。その鮮やかな色合いと複雑な風味は、一度食べたら忘れられない、忘れがたい体験となるはずです。

関連料理

ナシウラム（Nasi ulam）：様々なハーブや野菜を混ぜ込んだご飯料理。ナシクラブもナシウラムの一種と言える。
ナシダガン（Nasi dagang）：ココナッツミルクで炊いたご飯を使った料理。
* ナシレマッ（Nasi lemak）：ココナッツミルクとパンダンリーフで炊いたご飯を使った料理。

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