ナタリア・ゴンチャロワ (画家)

ナタリア・ゴンチャロワ：ロシア・アヴァンギャルドの先駆者

ナタリア・セルゲーエヴナ・ゴンチャロワ（1881年7月4日 - 1962年10月17日）は、ロシア・アヴァンギャルド運動において重要な役割を果たした美術家、デザイナーです。彼女は、生涯のパートナーであるミハイル・ラリオーノフと共に、独自の芸術運動であるレイヨニスムを追求しました。また、大詩人アレクサンドル・プーシキンの妻と同名であることでも知られています。

生い立ちと初期の活動

1881年、ゴンチャロワはトゥーラ近郊の村ナガイェヴォで生まれました。当初はモスクワ美術アカデミーで彫刻を学びましたが、後に絵画へと転向します。彼女は、ロシアの民芸品に見られるプリミティブな要素に強く影響を受け、フォーヴィズムやキュビズムなどの要素を取り入れながら、自身のプリミティヴィスムを確立しようと試みました。初期には、ラリオーノフと共にレイヨニスムを展開し、ロシアの前衛芸術運動において中心的な存在となっていきました。

前衛芸術運動における活躍

1912年には、ラリオーノフと共に展覧会「ロバの尻尾」を主催しました。この展覧会は、西欧美術からの影響を意図的に避け、ロシア独自の近代美術を確立しようとするものでした。ゴンチャロワは、ミュンヘンの前衛美術グループ「青騎士」の創設メンバーにも名を連ね、国際的な舞台でも活躍しました。

未来派との関わり

ゴンチャロワの作品は、初期のロシア民芸やイコンへの傾倒から、次第に未来派の影響を強く受けるようになります。「自転車乗り」やレイヨニスムの作品は、その代表例です。彼女は、ラリオーノフと共にモスクワの未来派の指導者として、イタリア未来派の思想を取り入れた講演会も開催しました。また、グラフィックデザインにも携わり、未来派の様式を用いた挿絵本を出版するなど、多岐にわたる活動を展開しました。

舞台美術への転身と晩年

1915年には、ジュネーヴでバレエの衣装と舞台美術を手掛け、1921年にはパリに移住し、セルゲイ・ディアギレフのロシア・バレエ団のために数々の舞台をデザインしました。彼女の舞台美術は、その革新的なデザインと色彩感覚で高く評価されました。1939年にフランスに帰化し、1962年にパリで生涯を閉じました。

死後の評価

ゴンチャロワの作品は、没後も高い評価を受けており、2007年には油彩画「リンゴ摘み」が、女性画家による作品として当時の最高額で落札されました。さらに、2010年には油彩画「スペイン」が記録を更新するなど、その芸術的価値はますます高まっています。

彼女の作品は、ネオ・プリミティヴィスムやロシア・アヴァンギャルド運動を代表するものとして、現代でも多くの人々に影響を与え続けています。

代表作品

「リンゴ摘み」
「スペイン」
「自転車乗り」

参考文献

В. А. ШИШАНОВ: ВИТЕБСКИЙ МУЗЕЙ СОВРЕМЕННОГО ИСКУССТВА - PDFファイル

関連項目

ネオ・プリミティヴィスム
ロシア・アヴァンギャルド

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