ナタ・デ・ココ

ナタ・デ・ココは、ココナッツ果汁を発酵させて作られる、独特な食感を持つ食品です。その歴史は18世紀に遡り、パイナップルを原料とするナタ・デ・ピニャの代用品として、1949年にフィリピン人女性化学者によって発明されました。

名称の由来と製法

「ナタ・デ・ココ」という名前は、スペイン語の「ナタ」（液体の表面にできる皮膜）と「ココ」（ココナッツ）に由来し、「ココナッツの上澄み皮膜」という意味を持ちます。

製造方法は、ココナッツ水に酢酸菌の一種であるアセトバクター・キシリナム（ナタ菌）を加えて発酵させます。菌が生成するセルロースが表面から凝固し、一定の厚みになったところでさいの目にカットして食用とします。このゲル状の物質は、ほとんどがセルロースで構成されています。

特徴

外観は寒天に似ていますが、イカのような独特の歯ごたえがあります。また、カロリーが低く、食物繊維が豊富なため、ダイエット食品や特定保健用食品としても利用されています。

日本での流行

日本へは1970年代後半にデルモンテがフルーツ缶に入れたのが最初とされています。その後、食品会社のフジッコがデザートとして商品化しましたが、当初はまだ一般的ではありませんでした。1992年7月に大手ファミリーレストランチェーンのデニーズがメニューに加えたこと、そして1993年春以降にマスコミで大きく取り上げられたことがきっかけで、大ブームとなりました。現在では、缶詰や瓶詰として単独で販売されるだけでなく、様々な食品や飲料と組み合わせて、デザートやお菓子として広く販売されています。

1993年の熱狂的なブームを経て、ナタ・デ・ココは日本でも日常的に親しまれる食品として定着しました。

食用以外での利用

ナタ・デ・ココと同様の産膜性酢酸菌が生産するセルロース・ゲルは、均質なセルロース・コロイドのゲルであることから、以前よりハイテク素材としての応用が研究されてきました。例えば、スピーカーのコーン紙としての利用が検討されています。

また、ナタ・デ・ココの成分の99%が水分、残りの1%が繊維質であることに着目し、水分を飛ばして乾燥させた繊維質に合成樹脂を浸透させ、有機ELディスプレイの透明基板として使用する研究も2000年代に行われていました。これにより、既存のガラス製パネルでは不可能だった、石英ガラス並みの低熱膨張性を備え、しなやかで折り曲げ可能な薄型ディスプレイを、再生可能な植物原料から製造できる可能性が示されました。さらに、ガラス製パネルよりも安価に製造できることから、薄型ディスプレイのコスト削減にもつながると期待されています。

関連項目

• - ティラミス
• - パンナ・コッタ
• - 那多ここね - 日本の漫画家。ペンネームは「ナタ・デ・ココ」に由来します。

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