ナビスコ

ナビスコ（Nabisco）

ナビスコは、アメリカ合衆国を拠点とする大規模な菓子メーカーです。その主要な製品群は、クラッカーやクッキーといったビスケット類が中心を占めています。本社機能はニュージャージー州イースト・ハノーヴァーに置かれていますが、現在はイリノイ州に本社を構える多国籍食品企業、モンデリーズ・インターナショナルの傘下に入っています。「Nabisco」という名称は、かつて使用されていた社名である「National Biscuit Company」（ナショナル・ビスケット・カンパニー）を略したものです。

シカゴにある同社の製造拠点は、世界最大規模の菓子工場として知られています。約17万平方メートル、実に180万平方フィートにも及ぶ広大な敷地を持ち、1200名以上の従業員がここで働いています。年間で約15万トンもの菓子を製造しており、これは3億2千万ポンドに相当します。チップスアホイ、オレオ、リッツなど、ナビスコが手掛ける主要なブランドは、世界中の市場で広く展開され、多くの人々に親しまれています。

歴史

ナビスコのルーツは、18世紀末に遡ります。1792年、マサチューセッツ州に「ピアソン&サンズ・ベーカリー」というパン店が開業しました。この店は、主に長距離の航海に適した保存性の高い堅パンの製造・販売を行っていました。19世紀末、実業家のウィリアム・ヘンリー・ムーアは、このピアソン&サンズ・ベーカリーを含む6つのベーカリーを買収し、1889年にニューヨーク・ビスケット・カンパニーを設立しました。同時期、シカゴの弁護士であったアドルファス・W・グリーンもまた、40のベーカリーを買収して1890年にアメリカン・ビスケット・アンド・マニュファクチャリング・カンパニーを設立します。さらに、ジョン・ゴットリーブ・ゼラーはリッチモンド・スチーム・ベーカリーを創業していました。

1898年、これらムーア、グリーン、ゼラーの3者によって、それぞれの会社が合併されることになり、ナショナル・ビスケット・カンパニーが誕生しました。合併後の本社はシカゴのホーム・インシュアランス・ビルに置かれ、初代社長にはアドルファス・W・グリーンが就任しました。その後、ジョン・ゴットリーブ・ゼラーが1923年から1931年まで社長を務めました。

社名変更と変遷

ナショナル・ビスケット・カンパニーは、長年親しまれてきた略称を正式な社名とすることにしました。1971年、正式社名を「ナビスコ」(Nabisco)に変更します。その後、1981年にはスタンダード・ブランズと合併し、「ナビスコ・ブランズ」(Nabisco Brands)と社名を改めました。1985年には、タバコ会社であったR.J.レイノルズ・タバコ・カンパニーと合併し、「RJRナビスコ」となりました。事業の再編が進む中で、1993年にはクラフト・ゼネラル・フーヅにシリアル部門を売却しています。

2000年には、フィリップ・モリスがナビスコを買収し、傘下のクラフトフーヅと統合しました。これは当時の食品業界において最大級の合併として注目されました。さらに時を経て、2011年にはクラフトフーヅが食品事業と菓子事業に分割されることになりました。ナビスコは、この分割によって誕生した菓子事業を担う新会社、モンデリーズ・インターナショナルの一部として組み入れられ、現在に至ります。

ロゴ

ナビスコの製品に見られる特徴的な商標は、「Orb and Cross」（宝珠と十字架）、あるいはラテン語で宝珠を意味する「Globus cruciger」と呼ばれています。このマークは、三角形の中に斜めに配された楕円形の上に、さらにロレーヌ十字が重ね合わされたデザインです。オレオなどのビスケット自体に刻印されていたり、製品パッケージの隅に印刷されたりしています。同社によれば、このマークは古くヨーロッパで品質を示すシンボルとして用いられていたことに由来するとされています。中世イタリアの印刷業者たちが使っていたマークが起源であり、「悪や身体に対する道徳的・精神的な勝利」、あるいは「キリストによる贖罪」といった意味合いが込められていると説明されています。現在使用されているロゴは、ロックバンドAC/DC|AC_DCのロゴなども手掛けた著名なグラフィックデザイナー、ジェラルド・ウエルタによってデザインされました。

日本では、マーク全体の形状、特に十字架や楕円の外側にある三角形に注目が集まることが多く、「赤い三角マーク」として広く認識されていました。

日本における展開

日本市場においては、1970年（昭和45年）に山崎製パン、米ナビスコ社、そして日綿實業（後のニチメン、現在の双日）の3社による合弁事業として、ヤマザキナビスコが設立されました。このヤマザキナビスコを通じて、ナビスコブランドの製品が日本国内で製造・販売されることになります。

しかし、1988年（昭和63年）には、米ナビスコ社とヤマザキナビスコとの間の資本関係は解消されました。その後は、山崎製パンとニチメンによる2社の合弁事業として運営が続けられます。日本での商品製造権および商標使用権に関するヤマザキナビスコとのライセンス契約は、2016年8月をもって満了となりました。

2016年9月以降、契約満了に伴い、モンデリーズ・インターナショナルの日本法人であるモンデリーズ・ジャパンが、「オレオ」「リッツ」「プレミアム」といった主要なブランド製品の販売を継続して行っています。一方、ライセンス契約が終了したヤマザキナビスコは、社名をヤマザキビスケット株式会社へと変更し、独自のブランドで菓子事業を展開しています。

主なブランド

ナビスコは、以下のような世界的に著名なブランドを含む、多岐にわたる製品ラインナップを持っています。

オレオ (Oreo)
リッツ (Ritz Crackers)
チップスアホイ (Chips Ahoy!)
プレミアム （Premium Crackers）
フィグ・ニュートン（Fig Newton）
ナター・バター（Nutter Butter）
テディ・グラハム（Teddy Grahams）
トリスケット（Triscuit）
ウィート・シンズ（Wheat Thins）
ローナ・ドゥーン（Lorna Doone）
マロマース（Mallomars）
チキン・イン・ア・ビスケット（Chicken in a Biskit）
クリスティー（Christie）
フェイマス・チョコレート・ウェファース（Famous Chocolate Wafers）
オイスタークラッカー（Oystercrackers）
ピーク・フリーンズ（Peek Freans）
ソーシャル・ティー（Social Tea）
イージーチーズ

これらのブランドを通じて、ナビスコは長年にわたり世界の菓子市場において重要な位置を占めています。

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