ナボポラッサル

ナボポラッサル：新バビロニア帝国の礎を築いた王

ナボポラッサル（紀元前658年 - 紀元前605年、在位：紀元前625年 - 紀元前605年）は、古代オリエント史において重要な役割を果たした人物です。アッシリア帝国の支配下にあったバビロニア南部（カルデア地方）を基盤に反乱を起こし、新バビロニア帝国を建国、アッシリア帝国の滅亡に大きく貢献しました。セム系の出身とされ、その卓越した政治手腕と軍事力によって、新たな帝国の礎を築き上げたのです。

アッシリア帝国崩壊への序章：反乱とバビロニア統一

ナボポラッサルは、アッシリア帝国の属州総督としてバビロニア南部を治めていました。紀元前627年、アッシリア王アッシュールバニパルが死去すると、帝国内部は混乱に陥り、弱体化していきました。この隙を突いて、ナボポラッサルは紀元前625年に反乱を起こし、バビロンを制圧、アッシリアからの独立を宣言しました。

その後、彼は着実に勢力を拡大し、紀元前616年までにバビロニア全土を統一しました。さらに、アッシリア帝国に対抗するため、メディア王キュアクサレスと同盟を結び、共同でアッシリア領への侵攻を開始します。ニップルを占領し、アッシュール包囲戦にも参加。アッシュール陥落後も、アッシリアへの攻撃を続けました。

ニネヴェ陥落：アッシリア帝国の終焉

アッシリア帝国は内部抗争と統治の無能さから、すでに衰退の一途を辿っていました。紀元前612年、バビロニア軍とメディア軍の連合軍は、アッシリアの首都ニネヴェを包囲。長期にわたる攻防の末、ついにニネヴェを陥落させました。アッシリア王シン・シャル・イシュクンは戦死したと推測されており、アッシリア帝国は事実上崩壊しました。

シリアでの戦い：アッシリア残党の掃討

アッシリアの抵抗は完全に消滅したわけではありませんでした。アッシュール・ウバリト2世率いる残党軍はハッラーンへと逃亡し、抵抗を続けました。しかし、ナボポラッサル率いる連合軍は追撃を続け、紀元前610年にハッラーンを陥落させました。アッシュール・ウバリト2世もこの戦いで戦死したとされています。

エジプトのネコ2世がアッシリア残党を支援するためにシリアへ侵攻した際には、激しい戦闘がメギドで発生しました。ユダ王ヨシュアはバビロニア軍の支援を受けながらネコ2世の軍を迎え撃ちましたが戦死しました。しかし、バビロニア軍はエジプト軍を撃退、アッシリア残党の抵抗は完全に終焉しました。

カルケミシュの戦い：新バビロニア帝国の隆盛

紀元前605年、ナボポラッサルの息子であるネブカドネザル2世は、カルケミシュの戦いでエジプト軍とアッシリア残党を決定的に破りました。この勝利は、新バビロニア帝国の繁栄の基礎となりました。同年、ナボポラッサルは病死し、その跡を継いだネブカドネザル2世は、新バビロニア帝国の黄金時代を築き上げるのです。

建設事業と宗教への篤い信仰

ナボポラッサルの治世は、大規模な建設事業によって特徴づけられました。バビロンの都市拡張や、各地の寺院、ジッグラトの修復・再建が行われ、帝国の威信を高めました。

1921年に発見された円筒形碑文には、ナボポラッサルの深い宗教心と、神殿修復への尽力の様子が記されています。彼は敬虔な人物として描かれており、マルドゥク神への信仰を強く示しています。これらの事業は、息子のネブカドネザル2世の治世へと引き継がれ、新バビロニア帝国の繁栄に大きく貢献することになります。

ナボポラッサルは、短命だったアッシリア帝国を滅ぼし、新バビロニア帝国を築き上げた偉大な人物でした。彼の政治的・軍事的な手腕、そして宗教への深い信仰は、後の新バビロニア帝国の繁栄の礎となりました。彼の死後も、その功績は長く人々の記憶に刻まれることでしょう。

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