ナポリ市電

ナポリ市電

ナポリ市電は、イタリアのナポリ市で運行されている路面電車です。19世紀に馬車鉄道として開業し、その歴史は非常に長く、市民の足として親しまれてきました。

現在では、地下鉄（ナポリ地下鉄1号線・6号線）やケーブルカー、路線バス、トロリーバス（ナポリ・トロリーバス）、公共エレベーターといった他の公共交通機関と共に、ナポリ市交通会社（Azienda Napoletana Mobilità、ANM）によって運営されています。

歴史

ナポリ市電のルーツは、1875年にベルギーの企業によって建設された馬車鉄道です。その後、路線網は急速に拡大し、1879年には郊外へ向かう路線を含む8系統が運行されていました。さらに蒸気機関車を導入し、1888年にはラックレールを用いた勾配区間を通る路線も開通しました。

1899年から、これらの路線は電化が進められ、1906年には全区間で路面電車による運行が開始されました。この電化の過程で、ラックレールは廃止されています。路線網の拡張は続き、1910年には23系統もの路線が運行されていました。

1918年からは、ナポリ市が路面電車の管理に直接関与するようになり、1919年には市営企業の「ナポリ市路面電車会社（Azienda Tranviaria del Comune di Napoli、ATCN）」が設立されました。1927年までに、それまで運営していたSATN（Société Anonyme des Tramways Napolitains）から、路線の移管が完了しました。1929年には、カポディモンテ地域方面の路面電車も市の所有となり、ナポリ市内外の路面電車は全てナポリ市の管轄となりました。1930年時点では、ナポリ市内には大規模な路面電車網が存在していました。

1931年、運営権はヴォルトゥルノ公共交通会社（Ente Autonomo Volturno、EAV）に移管されました。EAVは公共交通機関の近代化を積極的に進め、新型車両の導入や施設の更新を行いましたが、一方でトロリーバスを導入し、一部の路面電車路線を廃止しました。1941年には、再びナポリ市が運営に携わることになり、ナポリ市路面電車・自動車会社（Azienda Autofilotranviaria del Comune di Napoli、AACN）が設立されました。しかし、第二次世界大戦中の空襲でナポリ市電は大きな被害を受け、運行停止に追い込まれました。

1944年6月、復旧作業が開始され、1946年には全区間での運行が再開されました。1947年には、ナポリ路面電車・自動車会社（Azienda Tranvie Autofilovie Napoli、ATAN）が設立され、EAVと同様に、市内中心部の路面電車網をトロリーバスや路線バスに置き換える計画が進められ、1950年以降大規模な廃止が進みました。1960年代には新路線も開通しましたが、1980年の地震で路面電車も被害を受け、損傷した路線のほとんどが廃止されました。また、1980年代には高規格の路面電車路線を建設する計画もありましたが、実現には至りませんでした。

その後も路線の廃止が進み、地下鉄や道路工事の影響で運行休止が繰り返されました。特に2016年からは、数年にわたり路線全体が運行休止となりましたが、2020年から2021年にかけて全区間で運行が再開されています。車両については、2004年に初の超低床電車が導入され、今後も新型超低床電車の導入が計画されています。運営組織は、1995年にナポリ市交通会社（Azienda Napoletana Mobilità、ANM）に移管され、2013年からはナポリ市の完全子会社である「ナポリ・ホールディング（Napoli Holding Srl）」によって管理されています。

路線

2024年現在、ナポリ市電は以下の2系統で運行されています。

1号線: 旧1号線と旧4号線の統合系統。
2号線: 旧2号線の系統。

2023年までは3系統（1・2・4号線）が存在していましたが、同年9月のダイヤ改正により、全区間を経由する2系統に再編されました。これにより、公共交通サービスの最適化と電車の待ち時間短縮が図られています。

車両

現有車両

CT139K
アメリカで開発された「ピーター・ウィット・カー」を基に製造された車両で、1930年から1935年にかけて製造されました。1950年代に車体形状が変更され、一部車両は1970年代に車体更新が行われています。2023年時点でも15両が営業運転に使用され、1両（1029）は動態保存車両としてイベントなどに使用されています。
シリオ
アンサルドブレーダ（現：日立レール）が開発した超低床電車です。3車体連接車で、車内の床面高さは350mmに抑えられています。2004年から順次導入され、2023年時点で22両が在籍しています。

導入予定の車両

2024年には、トルコの鉄道車両メーカーであるボザンカヤが、ナポリ市との間で10両＋オプション10両の新型超低床電車導入契約を締結しました。この車両は、トルコのカイセリ市向け車両を基に設計され、全長30m、全幅2.4m、定員222人を想定しており、2025年までに営業運転を開始する予定です。

脚注

注釈

出典

参考資料

Azienda Napoletana Mobilità (2023). LA CARTA DELLA MOBILITÀ (PDF) (Report). 2024年12月31日閲覧。
Eduardo Bevere; Gerardo Chiaro; Andrea Cozzolino (1998). Storia dei trasporti urbani di Napoli e delle linee interurbane gestite dalla SATN, dalle Tramvie di Capodimonte e dalle aziende municipalizzate (Vol. 1) - Brossura. Calosci. ISBN 9788877851451 

外部リンク

* （イタリア語）“ナポリ市交通会社の公式ページ”. 2024年12月31日閲覧。

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