ナムグムダム

ナムグムダム (Nam Ngum Dam) の詳細

ナムグムダムは、ラオスの首都ビエンチャンから北へ約90kmのナムグム川（メコン川の支流）に位置する多目的ダムです。このダムは、水力発電だけでなく、観光資源としても重要な役割を担っています。ダムによって形成されたナムグム湖は、美しい景観を誇り、湖畔には水上レストランやクルーズ船が運航され、多くの観光客が訪れます。

歴史

ナムグムダムの建設は、ラオスの電力不足を解消するために計画されました。1958年、日本工営の技術者である久保田豊氏が、当時のスパーヌウォン王子に水力発電の可能性を提案したことが、このプロジェクトの始まりです。久保田氏は、ラオスの地形と豊富な水資源に着目し、自らメコン川流域を調査しました。

1964年、久保田氏は世界銀行に融資を申請しましたが、当初は計画が過大であるとして拒否されました。しかし、久保田氏は粘り強く交渉を続け、タイ政府との間で余剰電力をタイに売電する合意を取り付けることに成功しました。この合意が、その後の資金調達を大きく進展させることになります。

アメリカ合衆国、日本、オーストラリア、カナダなどからの資金援助を得て、1968年にダムの建設が開始されました。建設には、多くの日本の企業が関与し、ダム本体だけでなく送電網の整備にも貢献しました。建設期間中、ラオス内戦の影響でダム周辺はラオス王国とパテート・ラーオの勢力圏の境界となりましたが、スワンナ・プーマ首相によって中立地帯に指定され、工事は継続されました。

ダムは1971年12月に完成し、1972年から発電を開始しました。当初は3万キロワットのタービン2基でスタートしましたが、その後、発電能力を増強するために1975年と1983年にタービンが追加され、総発電量は大幅に向上しました。

完成後の影響

ナムグムダムは、当初発電された電力の70〜80%をタイに送電しており、ラオスの重要な外貨収入源となっていました。また、ダム建設によって約250平方キロメートルの森林が水没しましたが、水没したチーク材は水中伐採され、資源として活用されました。

しかし、ダムの建設は地域社会にも大きな影響を与えました。ダム建設前に河川漁業で生計を立てていた人々は移住を余儀なくされ、その他にも様々な問題が生じています。

現在、ラオス国内での電力需要が増加しているため、2006年以降は発電された全量が首都圏に供給されるようになっています。ナムグムダムは、ラオスの経済発展に貢献するとともに、観光資源としても重要な役割を担っています。ダム湖とその周辺地域は、ラオスを代表する観光地の一つとして、多くの人々に親しまれています。

このダムは、ラオスの経済発展に不可欠な存在であり、同時に、環境や地域社会との共存を考える上で重要な事例となっています。ダム建設の歴史や経済効果、そして地域住民への影響を理解することは、国際協力や開発プロジェクトを考える上で重要な示唆を与えてくれます。

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