ナヤン・カダアンの乱

ナヤン・カダアンの乱

ナヤン・カダアンの乱は、1286年から1292年にかけて大元ウルスに対して発生した大規模な反乱で、東方三王家（東道諸王）によるものでした。反乱は主に二つの段階に分かれ、最初の段階はナヤンの乱と呼ばれ、ナヤンが挙兵してから捕縛されるまでの期間（1286年4月から7月）を指します。次の段階はカダアンの乱であり、高麗へ逃れたカダアン率いる残党が1192年まで反乱を続けたもので、これらの反乱全体を「ナヤン・カダアンの乱」と呼称します。

この反乱が起こる背景には、当時のクビライの治世における政治的緊張がありました。東道諸王は、チンギス・カンの弟たちから始まる王家で、特にオッチギン家が権力を握っていましたが、クビライ政権との関係は次第に悪化していきました。ナヤンが早くから多くの権力を持ち、帝国内での地位向上を求めて傲慢になったため、反発が生まれたとされています。

反乱の背景

東道諸王は、オッチギン・ウルスを中心に、カサル・ウルス、カチウン・ウルス、ベルグテイ・ウルスといった王家から構成されていました。彼らはクビライ政権を支える役割を果たしていましたが、タガチャルの死後、オッチギン家当主ナヤンが反乱を起こしました。クビライの政策によって、彼らの権利が侵害されたことが主な原因とされています。

ナヤンが反乱を決意した理由について、歴史書『東方見聞録』には「彼は若き日に数国を治め、豪勢な軍を持っていたため、次第に驕慢になってしまった」と記されています。一方、ナヤンが若くして権力を持ったことが、その反乱の原因であると考えられていますが、現代の歴史家によると、クビライが進めた中央集権的な政策が、逆に東道諸王の不満を招いたとされています。東京等処行中書省の設置などが特に問題視されましたが、この設置が反乱の引き金であったとは一概には言えないという見解も存在します。

反乱の経過

ナヤンは遼東地区での徴兵を行い、1287年2月には反乱の準備を整えました。「ナヤンの乱」が勃発すると、彼は大規模な軍を起こし、数多くの諸王が応じました。カイドゥやコルゲン家、コデン家など、他の王家も参入し、反乱軍は壮大な規模で成立しました。

一方、クビライは反乱の報告を受け、迅速に軍を召集しました。彼は自身が直接指揮を執り、反乱軍に対抗するために出陣します。初期の戦闘では、ナヤン軍との接触時に思わぬ反撃を受けるも、最終的には勝利を収めました。

その後、ナヤンはついに捕らえられ、彼の残党指揮官カダアンは更なる抵抗を続けました。カダアンの乱は、ナヤンが捕縛された後も続き、1292年まで続く抗戦が展開されました。

戦後処理

ナヤンの乱とカダアンの乱が終息した後、クビライは東道諸王に対しての戦後処理を進めました。処罰の内容は、心情に配慮したものであり、主な指導者たちに対しては相応の処置が取られ、新たな構成員の任命が行われました。これはクビライの政権を安定させ、さらなる反乱を防ぐ目的がありました。しかし、戦後処理の不満が、カダアンの再起へと繋がることになります。

このように、ナヤン・カダアンの乱はクビライ政権に大きな影響を与えただけでなく、後のモンゴル帝国の統治や権力構造においても重要な意味を持つ出来事として位置づけられています。

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