ナラビオカミミガイ

ナラビオカミミガイ (Auriculastra duplicata)

ナラビオカミミガイ、学名 _Auriculastra duplicata_ は、有肺目オカミミガイ科に属する巻貝の一種であり、主に西太平洋の暖かい海域に生息しています。この貝は汽水域に位置する塩性湿地に見られ、特徴的な黄褐色の殻を持っています。成長すると、殻の長さはおおよそ5mmから8mmに達しますが、1cmに達する個体は非常にまれです。

その形状はラグビーボールを思わせるような独特の形をしており、光沢のある黄褐色または緑褐色の色合いを持っています。また、ナラビオカミミガイは、巻き貝の縫合部分が波打つ形状をしているため、他の類似種と容易に区別することができます。殻の内唇には比較的大きな歯を含む三つの小さな歯が並んでいますが、外唇には歯が存在せず、肥厚することもありません。

この貝は日本の三河湾から九州、そして沖縄本島北部まで広く分布しており、特に沖縄本島の個体は「沖縄型」と呼ばれています。ナラビオカミミガイは、静かな内湾や汽水域において、ヨシやチガヤ、スイバ、ハマウドといった海浜植物の生い茂る環境で生活しています。ほとんどの場合、暗く湿った場所を好み、昼間は石や漂着物の下に隠れる姿が観察できます。

オカミミガイ科の中では小型種として知られていますが、貝の光沢は特に目を引くため、生息地域では比較的見かけやすい存在です。また、同じ地域には、オカミミガイやキヌカツギハマシイノミガイ、オキヒラシイノミガイ、クリイロコミミガイなども共生していることがあります。

生態的には、ナラビオカミミガイとオカミミガイは、環境の攪乱に対して比較的強い耐性を持つため、他の種が生息地を失うような状況下でも存続が可能なことがあります。ですが、全体の生息地は内湾の埋立や護岸工事によって減少しているのが現状です。

この貝の保存状況については、日本の環境省が作成したレッドリストによると、2007年版で絶滅危惧II類（VU）に分類されています。さらに、各地域の独自のレッドリストでは、より厳しい評価を受けており、特に愛知県、三重県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県では絶滅危惧I類に指定されています。沖縄県においても、ナラビオカミミガイ沖縄型が絶滅危惧II類として挙げられています。

最後に、長崎県の未来環境条例においても、この貝は「希少野生動植物種」として指定されているため、適切な保護と対策が求められています。

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