ナレースワン

ナレースワン大王：アユタヤ王朝の救国の英雄

ナレースワン（1555年 - 1605年4月25日）は、アユタヤ王朝の21代目の王であり、サンペット2世とも呼ばれます。「大王」として、また「黒の王」としても知られ、タイの歴史において最も重要な人物の一人です。

生い立ちとビルマでの人質生活

ナレースワンは、マハータンマラーチャーティラート王（サンペット1世）の子としてピッサヌロークで生まれました。1563年、父が統治するピッサヌロークがビルマのバインナウン王に攻められた際、彼は人質としてビルマに連行されます。この期間、彼はビルマで軍事に関する知識や技術を学び、後の独立戦争に向けて力を蓄えることになります。

タイの独立と武力強化

1569年、タイがビルマの属国になると、父王が傀儡としてタイの王に擁立されます。その後、父王は娘をビルマ王に嫁がせ、代わりにナレースワンを帰国させました。帰国後、ナレースワンはビルマで学んだ軍事知識を活かし、タイの武力強化を推し進めます。この時期には古式ムエタイが創始されたとも伝えられています。1574年、タイはビルマに対して挙兵しますが、独立には至りませんでした。しかし、1581年にバインナウン王が亡くなりビルマが衰退し始めると、ナレースワンは父王と共に再び兵を挙げ、1584年にタイの独立を勝ち取りました。

国王としての活躍

1590年、父王が亡くなるとナレースワンは王位を継承します。彼は即位後、積極的に対外政策を展開し、1594年からビルマへの侵攻を開始しました。1600年にはビルマの都ペグーを攻略するなど、その武勇を内外に示しました。カンボジアとの戦いでは、プラヤー・ラウェーク王を捕らえて斬首し、その血で足を洗うというインドシナ半島で行われていた戦勝儀式も行いました。

海軍の創設と対外政策

ナレースワンは、対外関係の構築にも力を注ぎました。当時、ベトナムではベトナム族の南下に伴いチャム人の国チャンパーが弱体化しており、チャム人がタイに流入していました。ナレースワンはこれらのチャム人を利用して海軍を創設し、南シナ海から東シナ海にかけて活躍させました。また、ナレースワンは日本人商人の急速な台頭を懸念し、アジア地域の中国を中心とする国際秩序の維持を望んでいたとされます。1592年に豊臣秀吉の朝鮮出兵の情報を耳にした際には、日本の行動を阻害するために明に対してアユタヤの海軍を派遣することを提案しています。

最期と遺産

1604年、ビルマのタイ系シャン族がビルマ王ナンタブレンが毒殺されたことによる混乱に乗じて恭順してきたため、ナレースワンは彼らを保護するためにアユタヤから北上しました。しかし、翌1605年に現在のチエンマイ県北部で病死しました。

現在の評価

タイの歴史において、ナレースワンの業績は非常に高く評価されており、彼は「大王」と称される7人の王の一人です。特に、彼は救国の英雄として「タイ三大王」の一人とされ、旧50バーツ紙幣の裏面にも肖像が使用されていました。また、ナレースワンは神格化されており、ムエタイの創始者という伝承から、ムエタイ選手は彼の像の前で戦勝を祈ることがあります。

ナレースワン大王は、タイの独立を守り抜き、国力を高めた偉大な指導者として、今もなおタイ国民に敬愛されています。彼の生涯は、タイの歴史における重要な一章であり、多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

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