ナンヨウスギ属

ナンヨウスギ属（アラウカリア）について

ナンヨウスギ属（学名：Araucaria）は、ナンヨウスギ科に属する常緑針葉樹のグループです。学名からアラウカリア、アロウカリアとも呼ばれます。この属は、南半球を中心に多様な種が分布しており、その独特な樹形と生態から、様々な側面で人々の関心を集めています。

名称の由来

和名であるナンヨウスギ属は、オーストラリアやニューギニアなどに分布する種が、日本のスギの葉に似ていたことから名付けられました。特に、南米産の種よりも先に日本に紹介されたため、「南洋」という名が冠されています。

学名Araucariaは、いくつかの説があります。一つは、本属の種が自生するチリ中部のラ・アラウカニア州の地名Arauco（マプーチェ語で「泥の水」を意味する）に由来するという説です。もう一つは、チリの先住民族であるアラウカノ族、またはアラウコ語族に因むという説です。

形態

ナンヨウスギ属の植物は、常緑の針葉樹で、通常は雌雄異株です。種によっては樹高が60メートルにも達する高木に成長するものもあります。樹形は種によって様々ですが、一般的に成木にならないと種の特徴がはっきりと現れません。大枝は幹に輪生し、葉は鱗片状または針状で、螺旋状に配列しています。

生態

ナンヨウスギ属は、南アメリカ、ニューカレドニア、ノーフォーク島、ニュージーランド、オーストラリア、ニューギニアといった南半球に主に分布しています。現生する20種のうち、半数以上がニューカレドニアに分布しているのが特徴です。化石記録から、白亜紀には北半球にも広く分布していたことがわかっています。また、オウムの仲間が種子を糞に混ぜて広範囲に散布することで、ナンヨウスギの分布拡大に貢献していると考えられています。

人間との関係

ナンヨウスギ属の植物は、木材として利用されるほか、種子が食用になる種も多く存在します。その独特な樹形は庭園樹としても人気があり、シマナンヨウスギ（A. heterophylla）は観葉植物として広く利用されています。しかし、ニューカレドニアでは、ニッケル鉱の採掘によって、生育地の森林が破壊されているという問題も抱えています。

下位分類

ナンヨウスギ属は、現生種が20種知られており、そのうち14種がニューカレドニアに分布しています。これらの種は、以下の4つの節（section）に分類されます。

Araucaria節

球果が12cm以上と大きく、発芽の様式が地下性であるグループです。

パラナマツ（Araucaria angustifolia）：ブラジル南東部からアルゼンチンにかけて分布。別名ブラジルマツ、フサナンヨウスギ。成長すると傘状の樹形になります。
チリマツ（Araucaria araucana）：チリ・パタゴニアに分布。別名ヨロイマツ、英名モンキーパズル。巻き上がった枝と鋭い葉先が特徴です。種子は食用になります。
（絶滅）A. nipponensis：化石でのみ確認されている絶滅種で、日本や樺太で発見されました。

Bunya節

乾燥や低温に弱い難貯蔵性の種子を持ち、発芽は地下性です。絶滅種では、発芽が地上性だった可能性もあります。

ヒロハノナンヨウスギ（Araucaria bidwillii）：オーストラリア東部に分布。巨大な球果をつけ、種子は食用になります。カンガルーも餌にします。
（絶滅）A. brownii, A. mirabilis, A. sphaerocarpa：いずれも化石でのみ確認されている絶滅種です。

Intermedia節

Araucaria hunsteinii：パプアニューギニアに分布。
（絶滅）A. haastii：化石でのみ確認されている絶滅種で、ニュージーランドで発見されました。

Eutacta節

現生種が最も多いグループで、ニューカレドニアに分布する14種がすべて含まれます。

Araucaria bernieri：ニューカレドニアに分布。
Araucaria biramulata：ニューカレドニアに分布。
クックナンヨウスギ（Araucaria columnaris）：ニューカレドニアに分布。キャプテン・クックにちなんで命名。塔のように高く伸びる樹形が特徴です。
ナンヨウスギ（Araucaria cunninghamii）：オーストラリアとニューギニアに分布。種子はカンガルーが餌にします。
Araucaria goroensis：ニューカレドニアに分布。
ノーフォークマツ（コバノナンヨウスギ、シマナンヨウスギ）（Araucaria heterophylla）：ノーフォーク島に分布。
Araucaria humboldtensis, A. laubenfelsii, A. luxurians, A. montana, A. muelleri, A. nemorosa, A. rulei, A. schmidii, A. scopulorum, A. subulata：いずれもニューカレドニアに分布。
（絶滅）A. lignitici, A. famii：いずれも化石でのみ確認されている絶滅種です。

Yezonia節

（絶滅）Araucaria vulgaris：化石でのみ確認されている絶滅種で、日本（北海道）で発見されました。

Perpendicula節

* （絶滅）Araucaria desmondii：化石でのみ確認されている絶滅種で、ニュージーランドで発見されました。

まとめ

ナンヨウスギ属は、その多様な形態と生態、そして人間との関わりにおいて、非常に興味深い植物のグループです。しかし、一方で、環境破壊による絶滅の危機に瀕している種も存在します。これらの貴重な植物を守るために、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があるでしょう。

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