ニガイチゴ

ニガイチゴ：山野に咲く小さなキイチゴ

ニガイチゴ（学名：Rubus microphyllus L.f.）は、バラ科キイチゴ属に属する落葉低木です。別名ゴガツイチゴとも呼ばれ、日本各地の山野に自生しています。高さは1～2メートルほどで、横に這う地下茎から多数の茎が伸び、小さな藪を形成することが多く見られます。

ニガイチゴの特徴

茎は細く、全体に白っぽい粉を帯び、多数の鋭い刺が密生しています。葉は卵形で、基部は心臓形または切形、先端は丸みを帯びるか、やや尖ります。葉の縁には細かいギザギザ（鋸歯）があり、葉脈はくぼんでしわ状に見えるため、表面はやや硬く光沢があります。葉の裏面は白っぽい粉を帯びています。葉柄や葉の裏側の葉脈上にも刺が生えています。

花は短い枝の先に1～2個ずつ上向きに咲きます。この短い枝には小さな葉が数枚ついています。花弁は白色で細長く、長さは10～12mmほどです。花の後には、キイチゴによく似た形状の果実をつけます。この実は甘く食用可能ですが、種子に苦味があるため、「ニガイチゴ」という名前が付けられています。

生育環境と分布

ニガイチゴは、本州、四国、九州に広く分布しています。森林内部よりも、道端や林縁など、何らかの攪乱を受けた環境によく見られます。森林伐採跡地では、モミジイチゴやクマイチゴなどとともに、低木層を形成することがありますが、それらと比較して草丈は低く、大規模な藪を作ることはありません。地域によっては、個体数の減少が危惧されており、鹿児島県や宮崎県では準絶滅危惧種に指定されています。

ニガイチゴと近縁種

ニガイチゴとよく似た植物に、ミヤマニガイチゴ（R. subcrataegifolius (H.Lév. et Vaniot) H.Lév.、シノニム R. microphyllus subsp. koehneanus (Focke) Sugimoto）があります。ミヤマニガイチゴは、ニガイチゴと比較して葉の先端がより尖り、一箇所に複数の花をつけ、花弁が幅広いなどの違いが見られます。分布域は本州の東北地方から近畿地方にかけてで、ニガイチゴよりも高地に生育します。両種の中間的な特徴を示す個体も存在し、明確な区別が難しい場合もあります。

参考文献

北村四郎・村田源：『原色日本植物図鑑　木本編(II)』(1979)保育社
佐竹義輔他編：『日本の野生植物 木本Ⅰ』(1989)平凡社
* 米倉浩司・梶田忠：「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）(2003-)

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