ニコメディアのアドリアノとナタリア

ニコメディアのアドリアノとナタリア

ニコメディアのアドリアノとナタリアは、共にキリスト教の殉教者であり、カトリック教会と正教会で聖人として崇敬されています。アドリアノはハドリアノとも呼ばれ、正教会ではニコミデヤの聖致命者アドリアン、聖致命女ナタリヤと表記されます。

生涯

彼らに関する歴史的記録は多くありませんが、『ヒエロニムスの殉教者伝』に「アドリアノと23人の仲間」という記述が確認できます。彼らは、ガレリウス帝の統治下にあったローマ帝国で殉教したと伝えられています。

ホノリウス1世は、フォロ・ロマーノにあった元老院議事堂を教会に改装し、アドリアノに捧げました。

聖人伝

アドリアノは、元親衛隊の将官でした。ニコメディアでガレリウス帝と共に22人のキリスト教徒を捕らえ、拷問にかけ、その信仰心を試しました。しかし、アドリアノは彼らの信仰に感銘を受け、自らもキリスト教徒になることを決意し、投獄され拷問を受ける身となりました。

アドリアノの妻ナタリアは、夫と共に投獄されたキリスト教徒たちを陰ながら応援しました。彼女自身も迫害を恐れて信仰を隠していましたが、実はキリスト教徒でした。

アドリアノは、足首を切断され、金床の上で腿を砕かれ、両手を切り落とされるという残忍な拷問を受けた末に殉教しました。彼の仲間であるキリスト教徒たちも同様に、足を切断され殉教しました。ガレリウス帝は殉教者たちの遺体を焼き払うよう命じましたが、ナタリアは密かにアドリアノの片手を隠し持ちました。しかし、遺体が火の中に投げ込まれると突然の大雨が降り、火は消え、遺体は無事であったため、キリスト教徒たちの手によってコンスタンティノープルへと運ばれることになりました。

故郷に戻ったナタリアはしばらくの間、アドリアノの片手と共に暮らしていましたが、護民官から求婚されたため、コンスタンティノープルへと逃れました。コンスタンティノープルに到着したナタリアは、アドリアノの遺体に手を添え、アドリアノの夢を見た後、周囲に別れを告げ息を引き取りました。ナタリアの遺体は、殉教した聖人たちの傍らに並べられました。

崇敬

アドリアノは、兵士、肉屋、鍛冶屋の守護聖人として崇敬されています。彼はローマ貴族または騎士の服装を身につけ、金床と鉛を持った姿でナタリアと共に描かれることが一般的です。

記念日（記憶日）は9月8日（修正ユリウス暦では8月26日）です。正教会ではナタリアと共に崇敬されていますが、カトリック教会ではアドリアノのみが列聖されています。

参考文献

ヤコブス・デ・ウォラギネ、前田 敬作（訳）、西井 武（訳）、2006、『黄金伝説3』、平凡社〈平凡社ライブラリー〉 ISBN 978-4582765823
Herbermann, Charles, ed. (1913). "Hadrian" . Catholic Encyclopedia. New York: Robert Appleton Company.
「正教時報 2011年9月号」『正教時報』、正教時報社、2011年9月20日。
“St. Natalia, Martyr, of Nicomedia”. Antiochian Orthodox Christian Archdiocese. 2015年9月26日閲覧。
“St. Adrian”. Catholic Online. 2015年9月26日閲覧。

外部リンク

“聖人カレンダー「9月8日 聖アドリアノと聖ナタリア殉教者」”. 女子パウロ会. 2015年9月26日閲覧。

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