ニコライ・ペトロフ

ニコライ・アルノリドヴィチ・ペトロフの生涯と業績

ニコライ・アルノリドヴィチ・ペトロフ（1943年4月14日生まれ）は、ロシアの音楽界で特に称賛されたピアニストの一人です。彼はモスクワで舞踏家や音楽家を親に持った家庭に生まれ、幼少期から音楽と密接に関わってきました。彼の音楽のキャリアは、1949年から1961年までのモスクワ音楽院付属中央音楽学校での教育から始まります。そこで彼は音楽の基礎を徹底的に学び、さらに1961年から1966年までモスクワ音楽院、1966年から1968年まで同音楽院の研究科で学びました。

在学中の1962年、ペトロフはヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールに出場し、その見事な演奏から第2位を獲得しました。この結果は彼に国際的な舞台での評価をもたらし、さらに1964年にはエリザベート王妃国際音楽コンクールでも同じく第2位に輝きました。これらのコンクールでの成功が、彼がソ連を超えて活動するきっかけとなり、国際的な名声を築く道を開いたのです。

一方で、1966年にはチャイコフスキー国際コンクールにも挑戦しましたが、残念ながら手の故障により本選会を棄権せざるを得ませんでした。その際、優勝したのは当時16歳の才能、グリゴリー・ソコロフでした。ペトロフは、1965年からモスクワ国立アカデミー交響楽団のソリストとしても活動を続け、ロシア音楽を得意としながら幅広いレパートリーを誇りました。

彼は特に音楽教育にも深く関わり、桐朋学園をはじめとした多くの教育機関でマスタークラスを開壇しました。日本でも彼の演奏は高い評価を受け、来日時に行った演奏は今でも記憶に新しいものです。また、彼の国際コンクールでの審査において、アレクサンドル・ルビャンツェフの演奏に対して「第1位ばかりが能じゃない」といった評価を残しています。自身の順位が3位であった際の発言であり、技術や表現に対する深い洞察を表していました。

音楽録音においても彼は革新者でした。マイナーなレパートリーに対しても積極的に取り組み、特にニコライ・カプースチンのピアノソナタ第2番の初録音を行いました。また、リストの『パガニーニ練習曲』に関しても、当時の最難曲とされる楽譜を直読みして演奏したCDは、後に記念碑的な演奏として評価されました。

2011年、ペトロフは演奏旅行の最中にベラルーシで脳卒中に倒れ、帰国後にモスクワの病院で亡くなりました。享年68。彼の音楽と影響力は、今日も多くの人々によって受け継がれています。彼の遺した演奏や教育の足跡は、未来の音楽家たちにとって大きなインスピレーションとなるでしょう。

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