ニコライ・ボリソヴィチ・ガリツィン

ニコライ・ボリソヴィチ・ガリツィン王子

ニコライ・ボリソヴィチ・ガリツィン（1794年12月19日 - 1866年11月3日）は、ロシアの貴族であり、アマチュア音楽家として知られる人物です。彼の名は、偉大な作曲家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンとの関係によって特に記憶されています。ガリツィンは、ベートーヴェンに三曲の弦楽四重奏曲（作品127、130、132）を委嘱しましたが、これらはベートーヴェンの後期作品の中でも重要な位置を占めるものとなっています。

家族背景

ガリツィン王子の父はボリス・アンドレーヴィチ・ガリツィンで、母は篤志家のアナ・ボリソヴナ・ポテムキナでした。彼の子息であるユーリ・ニコラエヴィチ・ガリツィン（1823-1872年）は、作曲家および指揮者として活動しました。このように、ガリツィン家は音楽界においても重要な存在となっていきました。

ベートーヴェンへの委嘱

ガリツィンはかつてウィーンに住んでおり、その地でハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンといった著名な作曲家の音楽に触れていました。彼はチェロを演奏する一方で、妻は優れたピアニストでした。また、ガリツィンは自身でベートーヴェンのピアノ作品を弦楽四重奏や弦楽五重奏用に編曲も行っています。1822年11月には、ベートーヴェンに新たな弦楽四重奏曲の作曲を依頼しました。

その際、ガリツィンはサンクトペテルブルクからフランス語で手紙を送り、その中で「貴殿の才能に感謝を表しつつ、一、二、または三曲の新作四重奏曲を作曲していただけないか」と丁寧にお願いをしています。見返りとして、ベートーヴェンが相応しいと思う金額を支払う意志があることも伝えました。これを受けたベートーヴェンは、1曲あたり50ドゥカートの報酬で受け入れました。

当時、ベートーヴェンは1810年以来の弦楽四重奏作曲を再開しており、1823年は交響曲第9番の作曲で多忙を極めていましたが、1824年に入って初めて弦楽四重奏曲に本格的に取り組み始めました。最初に誕生したのが作品第12番であり、1825年3月にはシュパンツィヒ四重奏団によって初演されました。この楽団は、さらに他の二作、すなわち第13番と第15番も演奏しています。

ベートーヴェンは最初の四重奏曲に関しては報酬を受け取ったものの、残りの二曲については未払いであることが認識されていました。実際、この未払い問題は、ベートーヴェンの死後長い間解決されずにいましたが、1852年にようやくその相続人たちによって処理されました。

ベートーヴェンとの他の関係

ガリツィンは、ベートーヴェンの合唱作品『ミサ・ソレムニス』の楽譜をロシアの宮廷に紹介した際、重要な役割を果たしました。このおかげで、1824年4月にサンクトペテルブルクで初演が行われることになりました。彼はまた、1825年に出版されたベートーヴェンの序曲『献堂式序曲』に献呈されていることからも、両者の親しい関係が伺えます。

このように、ニコライ・ボリソヴィチ・ガリツィン王子は、音楽家としてだけでなく、作曲家との関わりを通じてロシアの音楽文化に大きな影響を与えた人物として評価されています。彼の行動は、当時の音楽シーンにおける重要な架け橋となりました。

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