ニコラウス・ペヴズナー

サー・ニコラウス・ペヴズナー：20世紀を代表する美術史家

サー・ニコラウス・ペヴズナー（1902年-1983年）は、ドイツ生まれのイギリスの美術史家で、20世紀の建築・デザイン史研究に多大な貢献を果たした人物です。ペフスナーという表記も用いられる彼の名は、現代デザインの理論的基礎を築いた重要な研究者として知られています。

生涯

ペヴズナーは1902年、ライプツィヒでユダヤ系商人の家庭に生まれました。ライプツィヒ、ミュンヘン、ベルリン、フランクフルトといったドイツの主要都市の大学で美術史を学び、研鑽を積みました。

ナチスの台頭以前は、ドレスデン・ギャラリーやゲッティンゲン大学で美術史研究者として活躍しました。しかし、ナチスの迫害を逃れるため、1934年にイギリスへ亡命。その後、イギリス国籍を取得し、ロンドン大学教授（1944年-1969年）やケンブリッジ大学教授（1949年-1955年）を歴任しました。

イギリス移住後、ペヴズナーはイギリスの美術史研究に大きな影響を与えました。特に、1953年から刊行されたペリカン・シリーズ『Pelican History of Art』の主幹を務めたことは彼の業績の大きな柱です。このシリーズは、現代デザインの歴史と理論を体系的にまとめ、世界中の美術史研究に影響を与えました。

彼の功績は高く評価され、1967年には王立建築家協会（RIBA）ゴールドメダルを受賞、1969年にはナイトの称号を授与されました。さらに、1975年にはアルバート・メダルを受賞するなど、数々の栄誉に輝きました。ペヴズナーは1983年、ロンドンで生涯を閉じました。

主要な著作

ペヴズナーは多岐にわたる著作を残しており、その内容は建築史、デザイン史、美術史に及びます。代表的な著作として以下のものがあげられます。

『ヨーロッパ建築序説』: ヨーロッパ建築の歴史を概観した入門書として高く評価されています。
『モダン・デザインの展開』: モリスからグロピウスまでのモダンデザインの展開を分析した名著です。
『モダン・デザインの源泉』: モダニズムデザインの源流を考察した作品です。
『イギリスの建築』シリーズ: イギリス全土の建築を網羅した大規模なシリーズで、ペヴズナーのライフワークともいえるものです。このシリーズは、イギリス各地を詳細に調査し、地域ごとの建築の特徴を丁寧に記述したもので、美術史研究に留まらず、建築家や建築愛好家にも広く読まれています。
『建築タイプの歴史』: 様々な建築タイプを歴史的に分析した、ペヴズナーの晩年の大著です。
『世界建築事典』: 世界各国の建築を網羅した事典で、編著にも携わりました。

これ以外にも多くの著書があり、その研究範囲の広さ、深さがうかがえます。彼の著作は、現在も美術史、建築史、デザイン史の研究において重要な参考文献として活用されています。

イギリス、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの建築調査

ペヴズナーは、『イギリスの建築』シリーズ以外にも、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの建築に関する多くの調査を行い、多くの書籍を出版しました。これらの調査は、地域ごとの建築様式や歴史を明らかにする上で非常に重要な資料となっています。

まとめ

サー・ニコラウス・ペヴズナーは、ナチスドイツからの亡命という困難な経験を乗り越え、イギリスにおいて美術史研究者として、そして教育者として、大きな功績を残しました。彼の研究は現代デザイン史の確立に大きく貢献し、その影響は現在も美術史、建築史、デザイン史の分野に及んでいます。膨大な著作群と綿密な地域調査は、後世の研究者にとって貴重な財産となっています。彼の業績は、これからも世界中の研究者や建築愛好家たちにインスピレーションを与え続けることでしょう。

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