ニコラウス3世 (ローマ教皇)

ニコラウス3世は、13世紀の後半にローマ教皇として在位した人物です。1210年または1220年に生まれ、1280年8月22日にその生涯を閉じました。本名をジョヴァンニ・ガエターノ・オルシーニといい、当時の有力貴族であったオルシーニ家の出身です。

教皇に選出される以前、ジョヴァンニは枢機卿として活躍しました。当時の教皇ヨハネス21世が学者肌で政治に関心が薄かったため、実質的に政務を担っていたのはジョヴァンニでした。1277年にヨハネス21世が事故死すると、後任を選ぶコンクラーヴェは半年もの長きに渡りましたが、最終的にジョヴァンニの実績が評価され、教皇に選出されました。これがニコラウス3世です。

教皇としてのニコラウス3世は、聖地奪回のための十字軍派遣を最重要目標に掲げていました。この目標を達成するため、枢機卿時代から世俗の君主たちとの和睦を積極的に進めました。しかし、ローマ王ルドルフ1世がロマーニャ地方の領有を放棄するよう打診すると、ニコラウス3世はこれを受け入れ、イタリア政策は転換を余儀なくされました。この決定は、教皇領の政治的影響力を弱める結果となりました。

また、ニコラウス3世は教会法にも深く関与しました。1279年には、フランシスコ会の司牧活動における特権を擁護する教令「エクジイト・クィ・セミナート」を発表しました。この教令には、利潤に関する問題も含まれており、教会内外で大きな論争を巻き起こしました。この論争は、当時の教会の財政問題や修道会のあり方を浮き彫りにするものでした。

一方で、ニコラウス3世は教皇庁の整備にも力を注ぎました。バチカン宮殿の改修はその代表的な例です。しかし、同時にネポティズム（縁故主義）も行い、親族を要職に登用しました。具体的には、3人の親族を高位聖職者に取り立てました。この行為は、教会の腐敗を招くものとして批判の対象となりました。

ニコラウス3世は、1280年にヴィテルボで卒中により死去しました。在位期間は短かったものの、その間に様々な政治的、宗教的な出来事に関与し、教皇庁に大きな影響を与えました。彼の政策や行動は、当時の教会と政治の関係を考える上で重要な事例を提供しています。

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