ニコロ・デッラバーテ

ニコロ・デッラバーテ（Niccolò dell'Abbate, 1509年または1512年 - 1571年）は、ルネサンス後期にイタリアで生まれた画家であり、室内装飾家としても重要な役割を果たしました。彼は、フランスのフォンテーヌブロー派に属し、イタリア・ルネサンスの芸術様式をフランスに導入した人物の一人として知られています。

生涯

デッラバーテは、モデナで彫刻家の息子として誕生しました。若い頃からモデナの彫刻工房で修行を積み、フェラーラ派の画家ガロファロやドッソ・ドッシから影響を受けました。彼の初期の作品は、当時の風俗や神話を題材とした長いフリーズが特徴的で、Palazzo dei Beccherie（1537年）、スカンディアーノのボイアルド伯のロッカ、ソラーニャのRocca dei Meli Lupiなどの室内装飾を手がけました。

1547年、デッラバーテはボローニャに移り住み、コレッジョやパルミジャニーノといった画家の影響を受け、作風に変化が見られるようになります。この時期の作品では、精緻な風景描写や、貴族の狩猟や愛の情景が描かれることが多く、しばしば神話的な物語と並行して描かれました。ボローニャでは、Palazzo Poggiの室内装飾や、モデナ近郊のサッスオーロ公爵宮殿でのフレスコ画「狂えるオルランド」の連作を手がけるなど、精力的に活動しました。

1552年、デッラバーテはフランスに移り、フランチェスコ・プリマティッチオの下でフォンテーヌブロー宮殿の室内装飾チームの一員として働きました。フランスでの活動初期には、アンヌ・ド・モンモランシーを記念する装飾の図面を制作し、この図面は現在ルーヴル美術館に所蔵されています。パリでは、プリマティッチオの設計に基づいて、現存しないHôtel de Guiseの礼拝堂の天井フレスコ画を制作しました。また、個人的な依頼で神話的主題の風景画もいくつか描いています。

デッラバーテの作品は、しばしば祝宴などの一時的な装飾として制作され、芸術の持つ機能性という側面も示しています。1571年には、シャルル9世とエリザベート・ドートリッシュの結婚後のパリ入城式の装飾も担当しました。デッラバーテは同年にフランスで生涯を閉じました。

作品の特徴と影響

デッラバーテの作品は、神話的な物語と風景を融合させたスタイルで知られています。特に、風景描写は後のクロード・ロランやニコラ・プッサンといった画家に影響を与えたとされています。彼のフレスコ画の多くは現存していませんが、ルーヴル美術館には彼の絵画コレクションが所蔵されています。

デッラバーテは、ルネサンス美術の発展において、イタリアとフランスの文化交流を促進した重要な人物です。彼の芸術的な才能と技術は、後の世代の芸術家たちに大きな影響を与え、ルネサンス美術史において重要な位置を占めています。

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