ニシノチャーミー

ニシノチャーミー。その名前に込められた「愛嬌のある」という響きが、彼女自身を表しているかのようだった。2004年3月8日生まれの競走馬は、デビュー戦で鮮やかな勝利を収め、将来を嘱望された。

2006年7月8日、函館競馬場。2歳新馬戦に挑んだニシノチャーミーは、単勝3番人気という期待を背負い、力強い走りでデビュー戦を制覇した。続く重賞初挑戦となった函館2歳ステークスでは、7番人気という下馬評を覆し、後にGI競走を2勝する名馬たちを相手に堂々の優勝。無敗で重賞タイトルを獲得するという快挙を成し遂げた。

しかし、その輝かしい未来は、予期せぬ事故によって暗転する。放牧中に左目を負傷、失明してしまうという不幸に見舞われたのだ。オーナーの西山茂行氏は、この知らせに言葉を失ったという。左目を摘出する手術を受け、長い休養を余儀なくされた。

復帰後、彼女は左目にハート模様のアイパッチを縫い付けたメンコを装着。その姿は、多くのファンに感動と勇気を与えた。2007年、桜花賞に挑むも18着と結果を残せなかった。その後も懸命に走り続けたが、思うような結果には恵まれず、10月26日、競走馬登録を抹消、引退することとなった。

引退後は繁殖牝馬として新たな人生を歩む予定だったが、11月14日、胸膜肺炎のため急死。わずか3歳での別れは、関係者やファンに深い悲しみをもたらした。その短い生涯は、華々しい勝利と、克服しようとした困難、そして突然の別れというドラマチックな物語だった。

ニシノチャーミーの血統背景も、彼女の輝かしい競走生活を支える一因となっていた。母は準オープン級にとどまったものの、新潟記念で3着の実績を持つ。さらに遡ると、その血統には数々のGI競走優勝馬の名が連なっていた。天皇賞（秋）やアルゼンチン共和国杯を制したメジロタイヨウの血も受け継いでいたのだ。

ニシノチャーミーの物語は、競走馬としての成功だけでなく、困難に立ち向かう姿、そして多くの人の心に深い感動を残した短い生涯、全てが彼女を伝説的な存在へと昇華させた。彼女のひたむきな姿と、惜しまれつつも幕を閉じた物語は、競馬ファンだけでなく、多くの人々の記憶に深く刻み込まれているだろう。 彼女が駆け抜けた時間は短かったが、その記憶は永遠に輝き続けるだろう。

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