ニッコロ・カスティリオーニ

ニッコロ・カスティリオーニ（Niccolò Castiglioni）は、1932年7月17日に生まれ、1996年9月7日にその生涯を閉じたイタリアの重要な現代音楽作曲家です。彼はボリス・ブラッハーやフリードリヒ・グルダといった師に学び、作曲家としての道を歩み始めました。

波乱に富んだ作風の変遷

カスティリオーニの音楽的な旅は、初期には新古典主義的な響きを持つ作品から始まりました。例えば、初期の代表作である《交響曲第一番》や《交響曲第二番》は、この時期のスタイルをよく示しています。しかし、彼の探求心はすぐに前衛音楽へと彼を導きました。ドイツのダルムシュタット夏季現代音楽講習会において、自作の《Inizio di movimento》を自身で演奏し披露したことは、彼が前衛作曲家としての地位を確立する上で重要な出来事となりました。さらに、ラジオドラマのための音楽《鏡を通して》（『鏡の国のアリス』に基づく）のような作品では、多様式主義的な手法を積極的に取り入れ、当時のイタリア現代音楽界において最先端をいく存在として広く認知されるようになりました。

不遇の時期と復帰

特に長期にわたるアメリカでの滞在は、カスティリオーニの作風に大きな変化をもたらしました。この時期に彼は、《三つの秘蹟劇》や《マスク》、そして管弦楽と合唱を伴う大規模な作品《戦争と愛欲のための交響曲》といった一連の「不条理音楽」と称される作品を発表します。これらの作品は、その衝撃的な内容から社会的に大きな物議を醸し、カスティリオーニ自身が精神的な問題を疑われる事態にまで発展しました。この騒動の結果、彼は約3年間にわたる活動の停止を余儀なくされ、自作の演奏会に立ち会うことすら困難な状況に陥りました。

しかし、カスティリオーニは音楽への情熱を失いませんでした。約3年のブランクを経て、彼はシュトックハウゼン国際作曲コンクールに《Sweet》を応募し、見事優勝を果たします。これを機に、彼は作曲活動に正式に復帰しました。

晩年の創作活動

復帰後のカスティリオーニの作風は、以前のような不条理な発想から離れ、より安定した、伝統的な確定記譜法に基づくものへと変化しました。しかし、その創作意欲は衰えることなく、亡くなる直前の1996年まで精力的に作曲を続けました。例えば、1990年に作曲された弦楽四重奏曲《ロマンス》では、当時の音楽界の潮流とは一線を画し、あえて十二音技法を採用するなど、独自の音楽的探求を深めました。彼は常に時代の流行とは無縁なところで、自らの音楽世界を孤高に追求する姿勢を貫いたと言えます。

カスティリオーニは教育者としても多くの音楽家を育て、中でもステファーノ・ジェルヴァゾーニは彼の著名な弟子の一人です。彼の作品は、現在もドイツのショット社（Ars Vivaレーベル）やイタリアのリコルディ、ゼルボーニ音楽出版社から多数出版されており、その革新性と独自性は今なお多くの音楽愛好家や研究者によって評価され続けています。

主要な管弦楽作品には、《Figure.》(1965)、《Sinfonia in Do》(1969)、《Inverno in-ver.》(1978)、《Sinfonia con rosignolo》(1989)などがあります。また、合唱作品では《Oltre la sfera che più larga gira》(1981)、室内楽では《Masques. A book of dances, chorales, symphonies and phantasies》(1967)などが挙げられます。電子音楽やオペラ、ラジオドラマ、オラトリオなど、その活動は多岐にわたりました。

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