ニホンザル・スキトオリメ (オペラ)

オペラ『ニホンザル・スキトオリメ』

概要

『ニホンザル・スキトオリメ』は、日本の作曲家、間宮芳生が木島始の同名の童話を原作として作曲した日本語のオペラです。プロローグとエピローグを含む全1幕8景で構成され、演奏時間は約80分です。この作品は、1965年にNHKで放送初演され、翌年には舞台初演も行われました。

作曲の背景

原作は、1957年に発表された木島始による大人のための童話『ニホンザル・スキトオリメ』です。間宮芳生はNHKの委嘱を受け、この童話をオペラ台本へと改作しました。台本では、原作にはない語り部として「木」が、そしてその聞き手として「男」が加えられ、物語に新たな視点が導入されました。間宮は1964年の約1年間をかけて作曲に取り組み、1965年に完成させました。

構成とあらすじ

物語は、クスノキの木が男に語りかける形で進行します。

プロローグ：年輪の秘密
クスノキの木目の秘密を知りたいと願う男に、木が物語を語り始めます。

第1景：森の肖像画コンテスト
猿の国では女王の肖像画コンテストが開催され、スキトオリメが1等賞を獲得します。

第2景：サルたちの姿とたましい
スキトオリメは旅に出て、猿でありながら猿でない人間という存在を知ります。

第3景：美しい女王ザルの望み
女王ザルは、自身の美しさを永遠に伝えられる絵を求めています。

第4景：画カキザルの投獄
スキトオリメは会心の出来の絵を描きますが、女王によって木の洞穴に投獄されてしまいます。

第5景：奇怪な絵 ざわめく森
犬たちの攻撃に備え、女王はソノトオリメが描いた肖像画を猿たちに持たせます。

第6景：ホラアナの爪あと
スキトオリメは、木の洞穴の壁に猿の真実の姿を描き続けます。

第7景：末期（まつご）の耳
死期が迫った女王ザルを、オトモザルは美しさは永遠だと安心させます。

第8景：炎あれくるう
犬たちは、人間に懐き、森を焼き払わせます。

エピローグ：芽生えの肌ざわり
男には、スキトオリメが描いた絵が見えるようになります。

登場人物

女王ザル：猿の国の女王。
オトモザル：女王の従僕。
スキトオリメ：真実を描こうとする画カキザル。
ソノトオリメ：なんでもその通りに描く画カキザル。
男：木の語る話を聞く人物。
木：物語の語り部であるクスノキ。
サルたち（合唱）：猿の国の民衆。

楽器編成

標準的な三管編成のオーケストラに加え、オルガン、バグパイプ、リュート、リコーダー（ブロック・フレーテ）が用いられています。間宮は、これらの楽器を「人物の具体的なイメージや関係性を音で表現するため」と述べています。また、古楽器を用いることで「中世の十字軍や宗教戦争のようなイメージ」を表現しようとしたと語っています。

初演と再演

放送初演：1965年11月22日、NHKにて放送。指揮は若杉弘、管弦楽はNHK交響楽団。主な配役は、女王ザルを滝沢三重子、オトモザルを友竹正則、スキトオリメを金谷良三、木を平野忠彦が演じました。
舞台初演：1966年3月14日、東京文化会館にて開催された第6回NHK音楽祭にて舞台初演。放送初演とほぼ同じキャストでした。
再演：2019年1月27日、すみだトリフォニーホールにてオーケストラ・ニッポニカにより再演。指揮は野平一郎、管弦楽はオーケストラ・ニッポニカ。この公演は、第17回佐川吉男音楽賞を受賞しました。

音楽の特徴

間宮芳生は、この作品で多様な表現方法を試みており、バグパイプやルネサンス様式のアンサンブルをオーケストラと対比させたり、戦争の場面にパイプオルガンを導入するなど、場面ごとに異なる音色と表現を追求しています。このオペラは、独特の楽器編成と物語の構成、そして音楽表現の豊かさによって、観客を魅了します。

参考文献

木島始『ニホンザル・スキトオリメ』新日本文学、12巻12号、1957年12月、pp.61-67。
「第6回NHK音楽祭　創作歌劇の夕べ」プログラム、NHK交響楽団、1966年3月14日。
木島始作『オペラ台本 ニホンザル・スキトオリメ』20世紀文学　4：特集＝ドラマ、1966年4月、pp.4‐18。
「ニホンザル・スキトオリメ」：木島始短篇集『跳ぶもの匍うもの』晶文社、1969、pp.189‐206。
サントリー音楽財団コンサート「作曲家の個展'87 間宮芳生」サントリー音楽財団、1987年。
間宮芳生『現代音楽の冒険』岩波書店、1990年、pp.115－118。
演奏会記録（N響ライブラリー） 2018年11月7日閲覧。
詩人・木島始が描く風刺の物語が間宮芳生の幻の傑作オペラ《ニホンザル・スキトオリメ》に〜53年ぶりの再演 (絵描きの音楽ノート no.06〈1月〉) (ONTOMO) 2019年1月20日閲覧

外部リンク

間宮芳生サイト
オペラ「ニホンザル・スキトオリメ」(オーケストラ・ニッポニカ)

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