平野忠彦

平野忠彦は、1938年山梨県甲府市に生まれ、2014年に生涯を閉じた日本の声楽家（バリトン）、オペラ歌手、音楽教育者、俳優、合唱指揮者です。

音楽家としての輝かしい足跡

東京芸術大学を卒業、同大学専攻科を修了後、畑中良輔に師事しました。在学中にオペラ『フィガロの結婚』でデビューを果たし、その才能を開花させました。1973年には文化庁の派遣により、ミラノとウィーンへ留学。二期会に所属し、日本を代表するバリトン歌手として、オペラ、ミュージカル、コンサートと幅広い舞台で活躍しました。オペラ出演は135回に及び、その歌声は多くのファンを魅了しました。

多岐にわたる才能

平野の才能は音楽だけに留まりませんでした。オペラで鍛えられた美声を生かし、朗読も手掛け、また合唱指揮者としても活躍しました。さらに、俳優としても才能を発揮し、NHK大河ドラマ『義経』では平盛国役を演じるなど、ドラマや映画にも出演しました。その演技は、音楽で培われた表現力を基盤としたもので、観る者を惹きつけました。

後進の育成

音楽教育者としても、平野は多大な貢献をしました。東京芸術大学と国立音楽大学で教授を務め、多くの優れた音楽家を育てました。門下生には、福井敬、井上雅人、藤澤眞理、佐藤泰弘、藤岡弦太、大山大輔、大久保光哉、沼尾みゆき、山下牧子、谷茂樹、樋本英一、櫻田亮、成田眞など、日本を代表する声楽家たちが名を連ねています。平野の指導は、門下生たちの音楽家としての成長を大きく後押ししました。

要職を歴任

平野は、二期会理事、文化庁文化審議会文化政策部会委員などの要職も歴任しました。その活動は、音楽界の発展に貢献しました。東京芸術大学名誉教授、聖徳大学客員教授としても教鞭をとり、また混声合唱団コーロ・オルフィーネの指揮者も務めるなど、教育と音楽活動の両面で尽力しました。

受賞歴と社会活動

ザルツブルク音楽祭特別賞、ウィンナーワルド・オペラ賞（現ジロー・オペラ賞）大賞、山梨日日新聞社「野口賞」など数々の賞を受賞しています。日本音楽コンクール運営委員、文化庁在外研修員の会理事長、東京室内歌劇場顧問、ザントナイ国際コンクール特別審査委員、藤沢芸術財団音楽総監督など、社会活動にも積極的に参加しました。

晩年と遺産

平野は、2014年6月13日、急性心筋梗塞により76歳で逝去しました。その音楽家としての功績は、著書『私の第四幕』や多数のディスコグラフィーとして記録されています。特に、アニメソングやディズニーの楽曲を収録したCDは、幅広い世代に親しまれています。また、数々のオペラやミュージカルへの出演は、映像や音声で今もなお、その才能を伝えています。平野の音楽に対する情熱と卓越した才能は、日本の音楽史に深く刻まれ、後世に語り継がれるでしょう。

主な出演歴

ジョルジュ・ビゼー 歌劇『カルメン』 エスカミーリョ 役
モーツァルト 歌劇『フィガロの結婚』 フィガロ 役
團伊玖磨 歌劇『夕鶴』
ミュージカル『アニー』
NHK大河ドラマ『義経』平盛国 役
テレビ朝日『題名のない音楽会』

これらの活動を通じて、平野忠彦は日本の音楽界に多大な貢献をしました。

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