ニューアーバンアジェンダ

ニューアーバンアジェンダとは

ニューアーバンアジェンダ（New Urban Agenda）は、国際連合の持続可能な開発における重要な枠組みであり、特に持続可能な開発目標（SDGs）を念頭に置いています。このアジェンダは、2016年10月17日から20日にかけてエクアドルのキトで行われた国連人間居住計画による第3回国連人間居住会議（ハビタット3）において公式に確認されました。この国際的な取り組みは、都市化が進む21世紀において、持続可能な都市開発を推進するための行動計画を示しており、一般には「キト宣言」とも称されます。

背景

ニューアーバンアジェンダは、1996年に開催された第2回国連人間居住会議で採択された「イスタンブール宣言」を引き継いでいます。この目的は、居住環境の改善と世界中のスラムの廃止を目指すものでした。2000年には、国連ミレニアム・サミットでミレニアム開発目標（MDGs）が設定され、その中に「スラムのない都市」の実現が盛り込まれました。その後、2012年の国連持続可能な開発会議や2014年の国連総会を通じて、持続可能な開発の新たな方向性が示されたことが、ニューアーバンアジェンダにつながる重要な要素となっています。

目標

ニューアーバンアジェンダの主要な目標は、2050年までに世界の70％の人々が都市に住むという予測に基づいています。これに対して、都市への人口移動による地域間格差や、文化摩擦、災害のリスクなど様々な課題を浮き彫りにし、持続可能な都市の権利と生活を実現しようとしています。また、都市の歴史的な背景を尊重しつつ、現代の都市景観の保護にも重点を置いています。

文化的側面とユネスコの役割

ニューアーバンアジェンダの導入に伴い、ユネスコは都市文化の重要性を認識し、顕彰活動を開始しました。2004年には、国連ハビタットと共同で「文化のためのアジェンダ21」を策定し、都市が持つ文化的な価値について触れています。ユネスコは、20世紀の建築物や都市計画の世界遺産登録を推奨し、都市の美的価値やアーバンデザインの均一化に対する懸念についても注意を払っています。

都市遺産の概念

都市遺産は、1998年のカンファレンスで初めて言及され、2005年には「世界遺産と現代建築」に関するカンファレンスでその範囲が広がりました。都市遺産は、個々の建築物のみならず、都市全体の景観や都市形態を重視します。近年の研究では、歴史的要素と現代的要素が融合した都市景観も遺産として認識されるべきとされています。たとえば、モロッコのラバト市がその具体例として挙げられ、近代的な都市と歴史的な街並みが共存する姿が評価されています。

現代都市の課題

現代都市の特徴として、経済活動に伴う絶え間ない変化が挙げられます。これにより、歴史的であることが求められる世界遺産に対して、現代の都市の景観を固定することは極めて困難です。このような背景から、ユネスコは都市遺産の明確な指針をまだ公表していませんが、研究に基づき都市全体の調和と機能に注目した取り組みが進められています。

日本の事例

日本においても、都市遺産の考え方が広がりを見せています。京都市が示した「持続可能な都市文明の構築を目指す京都宣言」は、新たな都市像を示す重要な指針となりました。地域独自の文化的景観の保護と発展が求められる中で、自治体や大学が文化財を都市遺産として認識する動きもありますが、ユネスコの目指す標準とは異なる点もあります。

ウィーンの課題

オーストリアのウィーンでは「ウィーン覚書」によって、現代と伝統の共存が探求されていますが、世界遺産としても登録されているウィーン歴史地区においては、都市化開発による問題も浮上しています。これにより、2017年には危機遺産として指定されたなど、持続可能な都市のあり方が問われています。

まとめ

ニューアーバンアジェンダは、持続可能な都市の実現に向けた国際的な協力の道筋を指し示しています。過去の教訓を生かしつつ、今後の都市の発展と環境保護、文化継承がどのように調和していくのか、さらなる議論と取り組みが不可欠です。

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