ニュージーランドラグビー

ニュージーランドラグビー協会（NZR）

ニュージーランドラグビー協会、略称NZRは、ニュージーランド国内におけるラグビーユニオン競技全体を統括する中心的な組織です。正式名称はNew Zealand Rugbyで、ニュージーランドラグビーと表記されることもあります。国際統括団体であるワールドラグビー（旧・国際ラグビー評議会）に加盟しており、国内外で幅広い活動を展開しています。

NZRの活動は多岐にわたります。男子の「オールブラックス」や女子の「ブラックファーンズ」をはじめとするニュージーランド代表チームの国際試合や遠征を運営するほか、南半球最高峰のクラブリーグ「スーパーラグビー」にも深く関わっています。さらに、国内では各州代表が競う主要大会として、「ナショナル・プロヴィンシャル・チャンピオンシップ（NPC）」や「ハートランド・チャンピオンシップ」を主催し、全国的な競技レベルの向上を目指しています。また、競技を支える審判の育成と派遣も重要な役割の一つです。

歴史

ニュージーランドにおけるラグビーの歴史は1870年代にイングランドから伝わったことに始まります。1875年にはオークランドとダニーデンのクラブ間で初めての試合が開催されました。その後、1879年にはウェリントンとカンタベリー州代表チームが発足しましたが、当時はこれらの州代表チームをまとめる全国組織はまだ存在しませんでした。

全国的なラグビー協会設立に向けた動きが進み、ニュージーランドで初めて地域協会が設立されてから12年後の1892年4月16日、「ニュージーランドラグビーフットボール協会（New Zealand Rugby Football Union、NZRFU）」として産声を上げました。設立当初は10の州代表協会が加盟していました。1893年には、ニュージーランド代表チームが初の海外遠征としてオーストラリアを訪れました。この年から、代表チームの公式ユニフォームには漆黒のジャージが採用され、「オールブラックス」の愛称の基盤が築かれました。1895年には新たに7つの州協会がNZRFUに加盟し、組織の規模が拡大しました。

国際的な連携も深まり、1949年には国際ラグビー評議会（現在のワールドラグビー）の加盟協会となりました。プロ化の流れの中で、1996年にはラグビー国際対抗戦「トライネイションズ」（現在のザ・ラグビーチャンピオンシップ）や、南半球のクラブチームによる「スーパー12」（現在のスーパーラグビー）を開催するため、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの3協会による合弁事業「SANZAR」（現在のSANZAAR）の設立に参画しました。

組織名称については、2006年に名称から「フットボール」という語を削除し、現在の「ニュージーランドラグビー協会」となりました。さらに、2013年からは「New Zealand Rugby」を公式なブランド名として採用し、広く認知されています。

組織運営

NZRは、ニュージーランドの法律に基づき法人格を持つ組織です。協会の最高責任者はチェアマンであり、2022年からは弁護士で実業家でもある元ニュージーランド総督のパツィー・レディ氏が務めています。日々の運営における最高責任者はCEOで、現在はマーク・ロビンソン氏が担当しています。

協会のブランド力向上などを目的として、パトロン制度を導入しており、パトロン、会長、副会長の3名が名誉職として起用されています。元オールブラックスキャプテンのサー・ブライアン・ロホア氏が2019年に死去した後、現在パトロンのポストは空席となっています。会長はビル・オズボーン氏、副会長はマックス・スペンス氏が務めています。理事会はチェアマン以下9名の議決権を持つ理事に加え、議決権を持たない会長と副会長の合計11名で構成されます。理事会は、CEOや各世代別代表チームのヘッドコーチの人選など、協会の重要事項を決定します。協会全体の職員数は約90名です。

NZRの本部は首都ウェリントンの「ニュージーランドラグビーハウス」に位置しており、オークランドにも事務所を構えています。また、パーマストン・ノースにはニュージーランドラグビーの歴史を紹介する博物館を開設し、ラグビー文化の継承にも貢献しています。

協会の主な目的は、憲章に明記されており、ニュージーランド全土におけるラグビーの振興と発展、国内外での試合や遠征の企画・参加、ワールドラグビーにおけるニュージーランド代表としての活動、ナショナルチームの結成と管理、そしてラグビーユニオンへの参加を奨励することを含んでいます。

代表資格とサバティカル

ニュージーランドラグビー協会には、海外チームでプレーする選手は基本的にニュージーランド代表の資格を持てないという独自の規定があります。しかし、この規定には「サバティカル（長期休暇）」という例外が設けられています。これは、選手が1年間限定で海外のリーグ（例えば、季節が逆の日本のリーグワンなど北半球のリーグ）でプレーすることを許可する制度です。この制度を利用して、多くの現役代表選手がニュージーランドでのシーズンオフに海外で活躍する機会を得ています。

主な関連チーム

NZRが管轄・支援する代表チームは多岐にわたります。

男子
ラグビーニュージーランド代表（オールブラックス）
オールブラックスXV（A代表）
マオリ・オールブラックス
7人制ラグビー男子ニュージーランド代表（オールブラックスセブンズ）
U-20ラグビーニュージーランド代表（ベイビーブラックス）
ニュージーランド・ハートランドXV
ニュージーランド・スクールズ（高校代表）
女子
ラグビー女子ニュージーランド代表（ブラックファーンズ）
* 7人制ラグビー女子ニュージーランド代表（ブラックファーンズセブンズ）

審判活動

NZRは5名の審判とプロ契約を結んでおり、ラグビーチャンピオンシップやスーパーラグビーといった主要大会に加え、ラグビーワールドカップや各国のラグビー協会からの要請に応じて国際試合へ審判を派遣しています。また、他国のラグビー協会との連携も積極的に行っており、日本ラグビーフットボール協会とは、レフリー海外留学派遣制度を通じて日本人レフリーのニュージーランドでの研修を支援したり、ニュージーランド人レフリーを日本のトップリーグへ派遣したりといった協力関係を築いています。

その他の活動

ラグビー関連の活動に加え、NZRは社会貢献活動にも取り組んでいます。例えば、国連児童基金（ユニセフ）とパートナーシップを締結し、ユニセフのテレビコマーシャル制作に協力するなど、慈善活動にも関わっています。

NZRは、ラグビー発祥の地であるニュージーランドにおいて、競技の普及・発展、代表チームの強化、そしてラグビー文化の維持・継承に努める、極めて重要な役割を担う組織と言えるでしょう。

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