ニューワールド・ピクチャーズ

ニューワールド・ピクチャーズ

ニューワールド・ピクチャーズ（New World Pictures）は、1970年にロジャー・コーマンとその弟ジーン・コーマンによって設立されたアメリカの独立系映画製作・配給会社です。この会社は、設立以来、低予算のエクスプロイテーション映画や若者向けの映画に特化しており、その先駆け的存在として知られています。

最初の代表作である『またまたあぶない看護婦』（1970年）は、ステファニー・ロスマンが監督を務めたもので、これがきっかけとなりさまざまな続編が制作されました。この作品群は「看護婦もの」として親しまれ、ニューワールド・ピクチャーズのアイデンティティを確立する要因となりました。さらに、「女囚もの」や「ギャングもの」「暴走もの」「環境怪物もの」など、多様なジャンルを模索し続けました。

同社の最大の特徴の一つは、若い才能に製作の機会を提供している点です。多くの映画監督や制作スタッフがここからキャリアをスタートしました。具体的には、ジョー・ダンテ、ジェームズ・キャメロン、ロン・ハワードなどが低予算映画の環境での経験を積み、やがて大物監督へと成長したのです。また、チャック・ノリスやデビッド・キャラダイン、シルベスター・スタローンといった俳優たちも、初期のキャリアにこの会社の作品に関わっていました。

さらに、有名な巨匠たちの作品も幅広く配給していました。例えば、イングマール・ベルイマンの『叫びとささやき』（1971年）や『秋のソナタ』（1978年）、フェデリコ・フェリーニの『アマルコルド』（1973年）など、多くの名作がニューワールド・ピクチャーズを通じて全米で公開され、映画界に大きな影響を与えました。黒澤明の『デルス・ウザーラ』（1975年）や、フォルカー・シュレンドルフの『ブリキの太鼓』（1979年）は、いずれもアカデミー賞外国語映画賞を受賞しており、この会社がいかに多様な作品を扱ってきたかを伺わせます。

また、三隅研次監督の『子連れ狼』（1972年）は、再編集された上映作がクエンティン・タランティーノに影響を与えるなど、その文化的影響も無視できません。

1983年、コーマンがニューワールド・ピクチャーズを手放すと、会社は少しずつその独自性を失っていきました。以降はテレビ番組の制作にシフトし、1991年にはソニー・ピクチャーズに売却。1992年には「ニューワールド・コミュニケーションズ」と名称を変更し、地方テレビ局の買収を進めました。やがてCBSネットワークの最大のオーナーとなったものの、その後、資金不足に苦しむことに。1994年にはフォックス放送との資本提携に合意し、それによって保有していた多くのテレビ局がネットワークチェンジをしたことが、大規模なメディア再編の一因となったのです。

その後、1996年にはニューワールド・コミュニケーションズがニューズ・コーポレーションに完全子会社化され、現在ではフォックス・テレビジョン・ステーションズがその地方局を運営しています。ニューワールド・ピクチャーズの歴史は、アメリカ映画の多様性を促進した重要な一ページを刻んでいます。

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