ニルヴァーナ (アメリカ合衆国のバンド)

ニルヴァーナ (Nirvana)

ニルヴァーナは、1980年代後半にアメリカ合衆国ワシントン州アバディーンで結成されたロックバンドです。オルタナティヴ・ロック、グランジの先駆者として知られ、音楽史に名を刻んでいます。ローリングストーン誌が選ぶ「歴史上最も偉大な100組のアーティスト」では第30位にランクインするなど、その影響力は計り知れません。

バンドの軌跡

1987年、カート・コバーン（ボーカル/ギター）とクリス・ノヴォセリック（ベース）を中心に結成。幾度かのドラマーの変遷を経て、1990年にデイヴ・グロールが加入し、不動のラインナップが完成しました。彼らの音楽は、それまでアンダーグラウンドだったオルタナティヴ・ロックをメインストリームへと押し上げ、1990年代の若者たち、特にジェネレーションXの代弁者として支持を集めました。

シアトルのグランジシーンで頭角を現したニルヴァーナは、1989年にインディーズレーベルのサブ・ポップからデビューアルバム『ブリーチ』をリリース。静かなAメロと爆発的なサビの対比を特徴とするサウンドを確立し、注目を集めました。1991年にはメジャーレーベルのDGCレコードと契約し、セカンドアルバム『ネヴァーマインド』を発表。収録されたシングル「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」は、全世界で大ヒットを記録し、ニルヴァーナは一躍時代の寵児となりました。

『ネヴァーマインド』は、RIAA（アメリカレコード協会）によってダイアモンド認定を受け、1990年代の音楽シーンにおける大きな転換点となりました。それまで主流だったヘアメタルや産業ロックの勢いを衰退させ、グランジという新たな潮流を生み出したのです。パンクの精神とポップなメロディ、そして社会からの疎外感や苦悩をテーマにした歌詞は、多くの若者の共感を呼び、世界的な人気を獲得しました。

大規模なツアーやコンピレーションアルバム『インセスティサイド』、EP『ホルモウニング』のリリースを経て、1993年にはサードアルバム『イン・ユーテロ』を発表。このアルバムもアメリカとイギリスのチャートで1位を獲得し、批評家からも高い評価を受けました。

しかし、1994年4月、カート・コバーンが自ら命を絶ち、ニルヴァーナは突然の解散を迎えます。カートの死後も、クリス・ノヴォセリック、デイヴ・グロール、そしてカートの妻であるコートニー・ラブによって、数々の未発表音源やライブアルバムがリリースされています。特に、1994年に収録されたライブアルバム『MTV・アンプラグド・イン・ニューヨーク』は、1996年のグラミー賞で最優秀オルタナティブ・ミュージック・パフォーマンス賞を受賞しました。

ニルヴァーナは、わずか3年間の活動期間中に全世界で7,500万枚以上のレコードを売り上げ、アメリカン・ミュージック・アワード、ブリット・アワード、グラミー賞など数々の音楽賞を受賞しました。2014年には、ロックの殿堂入りを果たし、その音楽は今もなお、世界中のリスナーに影響を与え続けています。

その後

バンド解散後、デイヴ・グロールはフー・ファイターズを結成し、世界的な成功を収めています。一方、クリス・ノヴォセリックはスウィート75、アイズ・アドリフトといったバンドで活動した後、近年は政治活動や執筆活動に専念しています。

2012年には、ハリケーン「サンディ」の被害支援チャリティーライブで、デイヴ・グロール、クリス・ノヴォセリック、パット・スメアが再集結し、ポール・マッカートニーとの共作曲を披露しました。

2018年には、セカンドアルバム『ネヴァーマインド』がグラミーの殿堂入りを果たし、2025年にはチャリティーコンサート「ファイアーエイド」で、クリス、デイヴ、パット・スメアが、様々なゲストボーカルを迎えてニルヴァーナの楽曲を演奏し、話題となりました。

音楽的特徴と影響

ニルヴァーナの音楽は、パンク、ヘヴィメタル、ポップなど、様々な要素を融合させた独特のサウンドが特徴です。カート・コバーンの書く歌詞は、社会に対する不満や疎外感、心の葛藤などを赤裸々に表現しており、多くの若者の共感を呼びました。彼らの音楽は、グランジ、オルタナティブロックの枠を超え、その後の音楽シーンに多大な影響を与え続けています。

ディスコグラフィー

スタジオ・アルバム
ブリーチ (1989年)
ネヴァーマインド (1991年)
イン・ユーテロ (1993年)

ライブ・アルバム
MTV・アンプラグド・イン・ニューヨーク (1994年)
フロム・ザ・マディ・バンクス・オブ・ウィシュカー (1996年)
ライヴ・アット・レディング (2009年)

コンピレーション・アルバム
ニルヴァーナ シングルズ (1995年)
ニルヴァーナ (2002年)

未発表曲・別テイク集
ホルモウニング (1992年)
インセスティサイド (1992年)
ウィズ・ザ・ライツ・アウト (2004年)
スリヴァー (2005年)

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