ハイダル・アル＝アバーディ

ハイダル・アル＝アバーディの政治経歴と業績

ハイダル・アル＝アバーディ（حيدر العبادي、1952年4月25日生まれ）は、イラクの政治家であり、2014年から2018年にかけて同国の首相として重要な役割を果たしました。彼はイスラーム・ダアワ党の副書記長で、政党連合「勝利連合」を率いています。宗教はイスラム教のシーア派に属しています。

日本では主に「アバディ首相」と呼ばれることが多く、外務省では「アバーディー首相」と表記されています。また、一部専門家やメディアは、彼の姓名の定冠詞である「アル」を省略して「ハイダル・アバーディ」としています。

来歴

イラクのバグダード出身のアバーディは、1975年にバグダード工科大学で電気工学を学んだ後、1981年にはイギリスのマンチェスター大学で同分野の博士号を取得しました。彼の政治活動は、1967年にダアワ党に加入したことに始まります。アバーディは、反政府活動に取り組む兄弟のうち二人をサッダーム・フセイン政権によって処刑されるという辛い経験をしています。

サッダーム政権崩壊前は、イギリスにてエンジニアリングのコンサルタントとして活動しつつ、亡命イラク人によるダアワ党の指導者として影響力を持ち続けました。2003年の米国のイラク侵攻後は、短期間ながら通信大臣として情報通信インフラの再建に寄与し、初めて携帯電話やインターネットの契約を提供しました。

さらに、2013年には財務委員会の議長を務め、経済政策にも関与していました。

首相としての実績

2014年8月11日、過激派組織ISILの脅威が増す中、新たに選出されたフアード・マアスーム大統領によってアバーディは次期首相に指名され、9月8日に新内閣を発足させました。内閣には、政治的なライバルであるヌーリー・マーリキー前首相、イヤード・アッラーウィー元首相、ヌジャイフィ元国民議会議長が副大統領として並ばされ、挙国一致体制の演出が試みられました。

アバーディの首相在任中、彼は国際的な協力を通じてテロとの戦いを強化し、ISILとの戦闘に取り組みました。さらに、経済改革やワークフォースの再構築にも努め、国民の生活改善を目指しました。

しかし、2018年5月に実施された議会選挙の結果、彼が率いる勝利連合は329議席中42議席のみを獲得し、議会内での第3勢力にとどまりました。続く9月には、バスラで発生した暴動を受け、議会第1勢力のサイルーンと第2勢力のファタハ同盟から辞任が求められる事態に至りました。10月には新大統領のバルハム・サリフが選出され、アバーディは10月25日に首相の職を退くこととなりました。

また、アバーディは首相在任中の2018年4月4日から5日にかけて日本を訪問しており、イラクと日本の関係改善にも関与しました。彼の政治キャリアには、イラクの安定化への努力が大きく反映されています。

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