ネイティヴダンサー

ネイティヴダンサー：グレイゴーストの伝説

ネイティヴダンサー(1950年-1967年)は、アメリカ競馬史にその名を刻む伝説的名馬です。圧倒的な強さで22戦21勝という輝かしい戦績を収め、その美しい芦毛と卓越したレース運びから「グレイゴースト(灰色の幽霊)」や「グレイファントム(灰色の幻影)」の愛称で親しまれました。

驚異的な2歳時代

1952年、2歳となったネイティヴダンサーはデビュー戦を快勝で飾ると、続くユースフルステークスでも優勝し、早くも重賞制覇を成し遂げます。その後、一時的な故障に見舞われ休養を挟みましたが、復帰後は驚異的な強さを見せつけ、9戦全勝でシーズンを終えました。その活躍は、当時の競馬界を席巻し、2歳馬としては異例とも言える賞金記録を樹立。圧倒的な強さから「サイテーションを凌ぐ戦後最強の名馬」と称賛され、早くも1952年度のアメリカ年度代表馬に選出されました。

ケンタッキーダービーでの惜敗とアメリカ三冠

翌1953年、ネイティヴダンサーはアメリカ三冠競走に挑戦します。ケンタッキーダービーでは、単勝1.7倍の圧倒的1番人気に支持されましたが、逃げたダークスターを捉えることができず、2着に敗れました。これはネイティヴダンサーにとって生涯唯一の敗戦となりました。しかし、続くプリークネスステークスとベルモントステークスでは、ライバルのジャミーケイとの接戦を制し、見事アメリカ三冠の2冠を達成しました。

その後も連勝を続けましたが、前脚の故障により、ライバルのトムフールとの対戦は実現しませんでした。トムフールが年度代表馬となった一方、ネイティヴダンサーは最優秀3歳馬に選出されました。

凱旋門賞への夢と突然の引退

1954年、復帰したネイティヴダンサーはメトロポリタンハンデキャップを制覇しますが、再び故障に見舞われます。馬主のヴァンダービルトは、凱旋門賞への遠征を計画し、調教師がフランスを視察するほど意気込んでいましたが、屈腱炎を発症したため、残念ながら引退を余儀なくされました。この年は3戦3勝という成績でシーズンを終えましたが、2度目の年度代表馬の栄冠に輝きました。

種牡馬としての成功と偉大な血統

種牡馬となったネイティヴダンサーは、高額な種付け料にもかかわらず、多くの牝馬に種付けされました。その産駒たちは数々の活躍を見せ、ネイティヴダンサー自身もリーディングサイアーの2位にランクインするなど、種牡馬としても大きな成功を収めました。特に、レイズアネイティヴを介してミスタープロスペクターという超一流種牡馬を輩出したことは、ネイティヴダンサーの血統の偉大さを物語っています。ミスタープロスペクター系と呼ばれるその血統は、現在も競馬界において大きな影響力を持っています。日本にも多くの産駒が輸入され、その中にはオグリキャップの父であるダンシングキャップも含まれます。

グレイゴーストの伝説

ネイティヴダンサーが活躍した時代は、テレビ放送が普及した時期と重なり、競馬中継が全国に広まりました。モノクロテレビでも際立つ芦毛の馬体が、先行から最後の直線で一気に抜け出すその姿は、まさに「グレイゴースト」と呼ぶにふさわしく、多くの競馬ファンを魅了しました。

ネイティヴダンサーの死とその後

1967年、疝痛のため急逝したネイティヴダンサー。小腸癌を患っていたことが判明しました。その死は、競馬界に大きな悲しみをもたらしましたが、その血統は現代競馬にまで受け継がれ、世界中の競馬界に大きな影響を与え続けています。彼の血統を受け継がない競走馬は、現代ではほとんど存在しないと言っても過言ではありません。ネイティヴダンサーの功績は、単なる名馬の枠を超え、競馬史に燦然と輝く偉業として永遠に語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索