ネウストラシムイ (駆逐艦)

ネウストラシムイ：ソ連初の戦後設計駆逐艦

ネウストラシムイ（ロシア語: Неустрашимый）は、ソ連海軍が第二次世界大戦後に初めて新規設計した駆逐艦である41型駆逐艦の唯一の建造艦です。NATOコードネームはタリン型とされていますが、これは西側諸国が初めてその艦影を捉えたのが、タリン近郊での海上公試中だったためと考えられています。

来歴

41型駆逐艦の戦術・技術要求事項（TTZ）は、1947年6月14日にソビエト連邦閣僚会議で承認されました。これは、大戦中に計画された嚮導艦47型の草案を基にしており、大型駆逐艦40型がスターリン書記長によって棄却されたことによる代替案でもありました。

この時期、ソ連海軍の上層部はスターリンの粛清の対象となっており、多くの提督が軍法会議にかけられていました。この影響で開発は遅延し、技術計画の承認は1949年9月28日となりました。41型駆逐艦は110隻の建造が予定されていましたが、まずは1隻を建造して評価を行い、その後連続建造を開始する計画でした。この計画に基づいて建造されたのがネウストラシムイです。

設計

船型は平甲板型で、船体中部にかけてシアが付されています。船体は溶接構造を基本とし、船質にはSHL-4型高張力鋼が使用されました。しかし、船殻が薄いために剛性不足が指摘されました。船体には13の横隔壁が設けられ、連続3区画の浸水にも耐えられるように設計されました。

居住性も改善され、先行する30-bis型（スコーリイ級）と比較して、1人あたりの居住区面積は1.25平方メートルから1.6平方メートルに拡大されました。これは、基地依存性を低減する目的がありました。

機関においては、30-bis型よりも小型化・高性能化が図られました。蒸気性状は、30-bis型に搭載されたKV-30型ボイラーの圧力27 kgf/cm2、温度350 °Cに対し、ネウストラシムイに搭載されたKV-41型ボイラーでは圧力64 kgf/cm2、温度450 °Cへと高圧・高温化されました。これにより、30-bis型と比較して100トン以上の軽量化が達成されたとされています。

しかし、同時期に計画が進んでいた82型巡洋艦（スターリングラード級）の速力がスターリン書記長の命令によって引き上げられたため、直衛艦として期待されていたネウストラシムイは、建造前にして既に速力不足の懸念が生じていました。公試では計画速力（36ノット）にも達しませんでした。これはタービンの蒸気消費量が想定より10％多く、規定の66,000馬力ではなく64,200馬力しか発揮できなかったためです。後に推進器の設計を改訂するとともに要求も妥協することで国家試験には合格しました。また、高速時には船尾が激しく振動するという問題があり、上部構造がこれに共振すると、船尾甲板では立っていることすら困難な状況でした。

装備

装備面での最大の特徴は、新開発の58口径13.0 cm両用砲（SM-2-1）の搭載でした。これはドイツの65口径10.5 cm両用砲（SK C/33）を参考に開発され、同世代のアメリカの38口径12.7 cm両用砲と比較すると、対地射撃能力には優れていたものの、発射速度が遅いため防空能力は劣っていました。対空兵器としては、45 mm 4連装機関砲を搭載しましたが、当初搭載したSM-16は信頼性が低く、後に同数のSM-20-ZiFに換装しました。

射撃指揮システム（FCS）には、68-K型（チャパエフ級）・68-bis型巡洋艦（スヴェルドロフ級）で搭載されたシステムを元に駆逐艦用に改訂したゼニット-41（Зенит-41）が採用され、火器管制レーダーとしてはヤーコリ-Mを搭載しました。艦橋上の大型方位盤は、支筒を含めて駆逐艦級への採用は初の試みでした。

艦歴

技術計画41号の政府承認から2か月後の1949年12月、レニングラードのA. A. ジダーノフ記念第190造船所において、ネウストラシムイの建造が開始されました。建造番号は614でした。

当時、同造船所では30-bis型の建造が続いていたため、ネウストラシムイの作業は滞りがちでしたが、1951年1月には進水に漕ぎ着けました。同年7月にクズネツォフ中将が海軍大臣に復帰すると作業が加速され、8月には係留状態での試験が開始されました。しかし、計画段階で既に速力不足が懸念されていたため、同型艦を建造するか否かは政治指導部や海軍当局の中でも意見が分かれていました。最終的に1951年6月2日、41型駆逐艦の建造はネウストラシムイのみで終了し、改良型（後の56型）に移行することが正式に決定しました。

係留試験が未了のまま、1952年1月には海上試験も開始され、本来は同年に海軍に引き渡す予定でした。しかし、試験中に計画速力を達成できないことが判明し、予定は大幅に遅れました。改良と要求事項の妥協を経て、1954年8月より国家試験が開始され、1955年1月に合格しました。

脚注

注釈

出典

参考文献

Gardiner, Robert (1996), Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995, Naval Institute Press, ISBN 978-1557501325
Литинский, Д. Ю. (1998), Суперэсмицы Советского флота, Специальный выпуск альманаха «Тайфун», http://www.wunderwaffe.narod.ru/WeaponBook/SD/index.htm
Pavlov, A. S. (1997), Warships of the USSR and Russia 1945-1995, Gregory Tokar (翻訳), Norman Friedman (編集), Naval Institute Press, ISBN 978-1557506719
海人社 編「独特の発達を遂げたソ連／ロシアの駆逐艦 (特集・戦後の駆逐艦)」『世界の艦船』第587号、海人社、86-91頁、2001年10月。 NAID 40002156164。

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