ネオグラシエーション

ネオグラシエーション：5000年前の寒冷化

ネオグラシエーションとは、約5000年前頃に発生したと考えられている寒冷期です。氷河が拡大した時期を示す「氷河拡大期」や「氷河再拡大期」とも呼ばれ、それ以前の温暖な時期であるヒプシサーマルの後、比較的短い期間にわたって発生しました。

地球の気候変動とネオグラシエーション

地球の気候は、約80万年前から現在にかけて、氷期（寒冷期）と間氷期（温暖期）を繰り返しています。およそ10万年の周期で、徐々に寒冷化が進み、極度に冷え込んだ後に急激な温暖化が起こるパターンが確認されています。

最終氷期は約2万年前にピークを迎え、その後、約1万4000年前から急激な温暖化が始まりました。この温暖化により、北半球の大陸氷床が融解し始め、現在の気候帯が形成された約6000年前頃には、ヒプシサーマル（後氷期の最暖期）がピークに達します。ネオグラシエーションはこのヒプシサーマルの後に発生した寒冷期と位置付けられています。

ネオグラシエーションの証拠

ネオグラシエーションの証拠は、世界各地で発見されています。

世界各地の事例

中国チベット自治区、カレラ峠: ヤムド湖西側のカレラ峠では、氷河の末端から約2キロメートル以内に、鮮明なモレーン（氷河が運んだ土砂が堆積した地形）が2列に並んでいるのが確認されています。最終氷期のものとする説もありますが、ネオグラシエーションのモレーンである可能性が高いと考えられています。
ケニア山: ケニア山では、BakerによってステージⅥモレーンと分類されたモレーンの中に、Tyndall前進期とLewis前進期という、ネオグラシエーションに関連する2つの氷河前進期の痕跡が見つかっています。

日本の事例

富良野盆地: 50メートルほどのボーリング調査で、ネオグラシエーション期の泥炭層が発見されました。この層からは、ヒプシサーマル期に増加していたクルミ、ミズナラ、トドマツなどの樹木が減少している一方、ハンノキ、ヤチヤナギ、ゼンマイ科のシダが増加していたことが明らかになっています。また、ミズナラの増加によって一時減少していたカバノキも増加しており、植生が現在に近い状態へと移行しつつあった様子がうかがえます。
飛騨山脈: 日本アルプスの飛騨山脈南部（槍・穂高連峰周辺）では、4段階の氷河前進期が確認されています。しかし、それらよりも新しい氷河拡大期、つまりネオグラシエーションの痕跡も複数地点で発見されています。

ネオグラシエーションに関する調査

ネオグラシエーションに関する研究は、各地での地質調査やボーリング調査、古植生分析などを基に行われています。具体的には、1995年の幌尻・戸蔦別岳巡検や、利根川下流部低地、東京湾北西岸低地、藺牟田池、柊原遺跡などのボーリング調査などが実施され、貴重なデータが蓄積されています。

まとめ

ネオグラシエーションは、最終氷期後の温暖化の後に発生した、比較的短期間の寒冷期です。世界各地、そして日本各地でその痕跡が発見されており、地球規模の気候変動を理解する上で重要な研究対象となっています。今後の研究により、ネオグラシエーションのメカニズムや、その気候変動への影響がさらに解明されていくことが期待されます。

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