ネオスポラ症

ネオスポラ症について

ネオスポラ症は、ネオスポラ属に属する原虫によって引き起こされる感染症であり、特に犬や牛に深刻な影響を与えることで知られています。この病気は、脳脊髄炎を引き起こすことが多い犬に対して特に注意が必要で、また牛においては流産の原因となるため、畜産業においては重要な管理対象となっています。日本では、ウシとスイギュウが感染対象となり、家畜伝染病予防法のもとで届出伝染病に指定されています。興味深い点として、これまで人間における感染の報告は確認されていないことが挙げられます。

病原体の特性

ネオスポラは、アピコンプレックス門に分類される単細胞の真核生物で、トキソプラズマと近縁です。現時点では2種類が知られており、主に N. caninumについての研究が進められています。特徴的なのは、ネオスポラの場合、犬が最終宿主である点で、トキソプラズマとは異なります。

この原虫は、犬が排出する感染性のオーシストを介して、中間宿主である牛やその他の動物に感染します。急性期には、体内で分裂しながら広がるタキゾイトの形を取り、その後宿主の免疫反応により、筋肉や脳にシストを形成し、慢性の感染が続きます。犬がシストを経口摂取することでこのサイクルが完結します。また、経胎盤感染を通じて母体から仔へと感染が伝播することもあります。

動物ごとの影響

イヌ

先天的に感染した仔犬では、麻痺症状が見られ、後肢に伸びきった姿勢が特徴的です。筋肉の萎縮や拘縮が見られるほか、成犬になると多発性筋炎の症状が現れることがあります。症状の進行を放置すると致命的になる危険性があり、治療が施された場合でも回復するのは難しいとされています。イヌにおいては、食事からのシスト摂取が主な感染ルートと考えられています。

ウシ

ウシにおいては、先天的な感染が流産の主要な原因となります。例えば、死産やミイラ胎仔の出産といった症状が確認されますが、正常に出産した場合は無症状で慢性感染に移行することが一般的です。経胎盤感染とオーシストの経口摂取が主要な感染経路であり、経胎盤感染のリスクが非常に高い点が特徴です。

ウマ

ネオスポラにはウマに感染するN. hughesiがあり、これが脳脊髄炎を引き起こすことが報告されています。ただし、N. caninumがウマに感染するかどうかについての知見は不明であり、抗体反応が確認されても発症例は限定的です。

診断法

確定診断には、脳脊髄液や組織中での原虫の発見が必要です。しかし、感染が確認された動物でも、病理切片において原虫が見つからないケースが多々あります。このため、症状や血清検査を用いた推定診断が行われています。また、トキソプラズマとの鑑別は、電子顕微鏡観察やPCR検査によって実施されます。

治療法

犬のネオスポラ症に対しては、トリメトプリム・スルファジアジンやピリメタミン、クリンダマイシンを組み合わせた治療法が考えられていますが、効果的な治療法は確立されていないのが現状です。

予防と現状

現在、ネオスポラ症に対するワクチンは実用化されていません。そのため、感染防止のための管理が特に重要とされています。

あらゆる動物に対する感染症の脅威に備えるため、注意深いモニタリングと予防対策が必要です。

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