ネオスポラ

ネオスポラの概要

ネオスポラは、アピコンプレックス門に属する寄生生物であり、特に家畜においてネオスポラ症を引き起こす重要な原生生物です。この生物は、宿主の組織内にシストを形成するコクシジウムの一種として知られています。ネオスポラは、家畜にとって深刻な健康問題を引き起こす可能性があり、そのため獣医療や農業の分野でも大きな関心が寄せられています。

生活環

ネオスポラの生活環は、類似するトキソプラズマと比較していくつかの顕著な違いがあります。特に、ネオスポラはイヌやコヨーテのみにおいて有性生殖を行うのに対し、トキソプラズマはネコ科動物における有性生殖に限定されています。無性生殖は、幅広い哺乳類や鳥類の宿主において行われると考えられています。このため、イヌはネオスポラの終宿主として機能し、その他の動物が中間宿主となるのです。

無性生殖期

無性生殖において、ネオスポラは宿主の細胞に侵入し、寄生体胞と呼ばれる構造を形成します。この内部では内生二分裂と呼ばれる方法で増殖が行われます。原虫の増殖に伴い、寄生体胞は次第に肥大化し、宿主細胞が破裂すると新たな原虫が周囲の細胞に侵入します。無性生殖期で形成される急増虫体（タキゾイト）は、通常、宿主の免疫系によって排除されますが、免疫機能が弱い筋肉や脳内ではシスト（ブラディゾイト）を形成し、ゆっくりと増殖を続けることができます。これらの原虫は、無性生殖サイクルの一環として知られています。

有性生殖期

終宿主であるイヌに感染した場合、この寄生生物は腸の粘膜上皮細胞内で有性生殖を行い、オーシストを生成します。このオーシストは未成熟な状態で糞便に排出され、外界でスポロシストやスポロゾイトに発展します。これが無性生殖の過程であるスポロゴニーです。

形態

ネオスポラの形態はトキソプラズマに非常に似ています。たとえば、急増虫体の長さは約7μm、幅は2μmです。シストは外壁がトキソプラズマよりも厚く、約4μmに達します。内部のブラディゾイトのサイズは、長さ8μm、幅2μmほどです。オーシストは直径11～12μmで、成熟すると内部に2つのスポロシストを形成し、それぞれに4つのスポロゾイトが含まれます。

分類

ネオスポラはアピコンプレックス門の中で真コクシジウム目肉胞子虫科に属する生物であり、主に二つの種が知られています。それは、イヌを終宿主とする Neospora caninum と、ウマに関連する病状を引き起こす Neospora hughesi です。

近縁生物

分子系統学的な研究からは、Heydorniaという近縁種が存在し、ネオスポラと同じようにイヌ科動物を終宿主として持っています。しかし、Heydorniaは中間宿主間での感染をせず、経胎盤感染もないとされています。トキソプラズマとは形態や生活環が似ており、経胎盤感染や糞口感染によって中間宿主間に伝播しますが、ネオスポラはイヌ科を終宿主とする点で異なります。

進化

ネオスポラとトキソプラズマは近縁であり、食肉目でイヌ科とネコ科が分岐した時期以降に成立したと考えられています。この分岐の年代は異なる見解があり、最近の研究では2800万年前とされることが多いです。

ゲノム

Neospora caninum のゲノム解析が進められており、14本の染色体上に61MbpのDNAと7227の遺伝子が確認されています。

歴史

ネオスポラの発見は1925年に遡り、イヌから最初のオーシストが見つかりました。その後の研究で1984年にノルウェーで発見された原虫が「Neospora caninum」と命名され、異なる種としての区別が進みました。

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