ネガティブ技法

ネガティヴ技法（ネガティヴ・ペインティング、レジスト・ペインティング）

ネガティヴ技法は、先古典期以降のアメリカ大陸で広く使われた土器装飾技術の一つであり、そのユニークさが評価されています。この技法は、一般にろうけつ染めの原理に類似した方法で説明されることが多いです。具体的には、器の表面に樹脂やろうで文様を描き、その上から暗色の顔料や化粧土（スリップ）を塗布して焼成することによって、文様の部分が白っぽく浮き上がる効果を生み出します。

技術的には、いったん焼成した土器に湿った粘土を用いて文様を追加し、その後に炭化しやすい物質を塗布して加熱することで、焼かれていない部分が暗い色に変わるという手法も提案されています。この手法では、文様が施された部分は加熱によってスリップが剥がれ、土器本来の色が露わになることが期待されますが、正確にはどちらの技法が一般的に使用されていたのかは未だに解明されていません。

ネガティヴ技法の広がり

メソアメリカの文化においては、紀元前1100年のオルメカ文化からその先駆的な事例が見られます。当時の土器は、胎土に白い顔料を塗布し、文様部分を掻き落とすか、レジスト・ペインティングで文様を作成する技術が使われていたと考えられています。特にチャパス州の土器には、平底で外反する口縁を持ち、先古典期中期から後期にかけて独特な光沢を持つ土器があり、この技法が用いられていることが分かります。

さらに、メキシコ西部エル・オペーニョの遺跡からも幾何学模様の土器が発見され、紀元前300年から紀元後300年にかけてのコリマ州の遺跡からもこの技法で装飾された土器が見つかっています。これより、ネガティヴ技法の起源は紀元前1000年頃まで遡る可能性があるとされますが、確たることは言えません。

特に注目すべきは、エルサルバドルのウスルタン式土器です。この伝統は紀元前500年頃から見られ、Olocuitlaから発展し、イサルコ・ウスルタンという独特の模様を持つ土器が登場しました。このスタイルは、先古典期後期のマヤ地域に強い影響を与え、古典期にはペテン低地においてその技術がやや衰退しますが、ホンジュラスではチランガ赤彩土器が存続しています。

北米では、ホープウェル文化の遺跡からこの技法の使用が確認され、少なくとも紀元前後にはその存在が明らかになっています。ミシシッピ文化圏でもこの伝統が継承され、様々な土器が出土しています。

アンデス地域でも、この技法は重要な位置を占めています。パラカス文化に見られる文様は、紀元前300年頃から始まり、後にサリナール文化やモチェ文化、さらにはビクス文化に引き継がれました。また、ペルー北高地のレクワイ文化は、この技法の代表的な事例とされており、紀元後の中期ホライズンにはワリの黒色彩文土器も同様の技法が採用されています。

エクアドルのバイア文化やトゥンカワン文化、さらにはチリのエル・モイエ文化においても、同時期にこのネガティヴ技法が使用されていることが確認されています。これらの文化から見ても、ネガティヴ技法はアメリカ大陸の多様な地域において、独自の美しさと技術が融合した重要な表現手法であったことが伺えます。

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