ネゲヴ空中衝突事故 (1983年)

ネゲヴ空中衝突事故

ネゲヴ空中衝突事故は、1983年5月1日にイスラエルのネゲヴ砂漠上空で発生した空中衝突事件です。この事故では、イスラエル航空宇宙軍のF-15D戦闘機とA-4N攻撃機が衝突しました。この事故の中でも特に注目を集めたのは、F-15Dが主翼をほぼ完全に失いながらも、自力で着陸を果たした点です。

事故の概要

事故が起きたのは、異種航空機戦闘訓練（DACT）を実施していた最中でした。イスラエル空軍第106飛行隊に所属するF-15D「バズ」957号機と、第116飛行隊に所属するA-4N「アイティ」374号機が参加していました。この訓練の途中、両機は衝突し、A-4Nのパイロットは射出座席によって脱出しましたが、機体は墜落しました。

衝突によって、F-15Dの右主翼は根元から約60cmを残して失われてしまいました。しかし、パイロットのZiv Nediviは主翼が失われていることに気づかず、燃料漏れにより発生した煙が視界を遮ったため、状況を把握できていませんでした。F-15は衝突後、一時は制御を失う危険な状態に陥りましたが、Nediviはアフターバーナーを活用して機体のスピードを上げ、制御を取り戻しました。

F-15は残った主翼や水平尾翼、機体そのものの揚力を利用し、失速することなく飛行を続けました。そして、事故から約15km離れた場所にあるラモン空軍基地に向かい、無事着陸を果たしました。着陸時は滑走路の終端の約6m手前で停止することができ、無事な帰投を成し遂げました。

パイロットの回想

Ziv Nediviは、もし主翼がないことに気づいていたら脱出していた可能性が高いと述べています。それでも、彼はF-15の飛行速度についても言及し、主翼なしでも「ロケットのような速さ」で飛行できたと振り返っています。この発言からもF-15の性能の高さが伺えます。

事故機のF-15D 957号機は、その後テルノフ空軍基地の修理部隊によって修復され、再度第106飛行隊で運用されました。この機体は1982年のレバノン侵攻において、4機のシリア空軍機を撃墜した実績を持っています。事故から約2年半後の1985年11月19日、957号機は再びシリア空軍のMiG-23を撃墜し、撃墜数を5機に伸ばしました。

この事故は、特殊な状況下におけるF-15の飛行性能や生存性を示すエピソードとして記憶されることとなり、また前年に発生したF-15Cの帰投成功の事例と合わせて語られることが多いです。こうした事件は、航空機の技術力だけでなく、パイロットの勇気と操作技術の重要性を物語るものとして、多くの人々に知られることとなりました。

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