ネシェル (航空機)

ネシェル（Nesher）

ネシェルとは、イスラエル・エアクラフト・インダストリー社による開発の多用途戦闘機で、フランスのダッソー社が製造したミラージュIIIの派生型です。ネシェルという名称は「鷲」を意味し、英語風にネシャーとも表記されることがあります。

開発背景

1966年、イスラエルはフランスとの間で、ミラージュIIIの簡易型であるミラージュ5Jを30機購入する契約を締結しました。しかし、1967年6月に勃発した第三次中東戦争を受けて、フランス政府はイスラエルへの武器禁輸措置を実施することを決定しました。このため、イスラエル政府はダッソー社とミラージュ5Jのライセンス生産に向けた交渉を始めましたが、禁輸は解除されることがありませんでした。その結果、フランスで生産された50機はフランス空軍へ納入されました。

イスラエル国防省は1967年10月にミラージュ5Jのライセンス生産を統括する新組織「航空機計画局」を設立しました。同年末には、ダッソー社との間で7400万フランのライセンス契約が締結されました。リバースエンジニアリングによるコピー生産は計画されていませんでした。

エンジンの技術移転も難航しましたが、イスラエルは諜報活動を通じてスイス・スルザー社のエンジニアからアター9Cエンジンに関する図面の持ち出しに成功しました。これにより、イスラエルは独自のエンジン生産につながる重要な技術を手に入れました。

運用と実績

イスラエル空軍は1970年にネシェルの初号機を受領し、単座型51機と複座練習型10機が製造されました。ネシェルは第113飛行隊と第144飛行隊に配備され、1973年の第四次中東戦争にも参加しました。その後、J79エンジンを搭載した発展型クフィルが登場するものの、ネシェルも引き続き運用されました。

アルゼンチンでは、1978年から1981年にかけて39機が購入され、ダガーと改名されました。ダガーは、フォークランド紛争においてオリジナルのミラージュIII EAと共に戦闘を行いましたが、イギリス軍との交戦では大きな損失を被りました。残った機体は、その後イスラエルによる改修を受け、フィンガー規格にアップグレードされました。

技術スペック

ネシェルの設計は、運動性能や戦闘能力を高めるために緻密に行われました。以下はその主なスペックです。

• - 翼幅: 8.22m
• - 全長: 15.03m
• - 全高: 4.50m
• - 翼面積: 35.00m²
• - 空虚重量: 6,570kg
• - 離陸重量: 13,500kg
• - エンジン: スネクマ アター 09C-5×1
• - 最大出力: 60.80kN
• - 最高速度: 2,350km/h/M2.2
• - 巡航速度（高度11,000m）: 956km/h
• - 航続距離: 4,000km
• - 戦闘行動半径: 1,200km
• - 実用飛行上限高度: 17,000m
• - 上昇力: 3,700m/min
• - 乗員: 1名

武装

ネシェルの武装構成には、30mm機関砲（DEFA 552A、弾数125発）や空対空ミサイル、各種爆弾が含まれます。最大で4,000kgの兵装を搭載可能です。

ネシェルはその独自性と性能から、軍事史において重要な戦闘機の一つとされています。

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